音楽/詞:ローレンス・オキーフ&ネル・ベンジャミン
脚本:ヘザー・ハック
翻訳・訳詞・演出:上田一豪
出演:神田沙也加 平方元基 植原卓也 樹里咲穂 新田恵海 木村花代 長谷川初範ほか
ほぼ全編泣きながら見ていた。初演はメルパルクの2階で観たせいか、そこまで入り込めなかったのだけれど。日本から一歩出れば「外国人」としてアウェーになるように、ところ変われば誰もがホームとアウェーを経験するわけだけど、「女性であること」は、ほぼどこでもアウェーなのでは。外見での品定め、男性のステイタスの一部や所有物として捉えられること、セクハラ、セクハラに対して第三者からなぜか被害者側が責められること、男性を上回る成果や評価が、実力者との性的関係による見返りのためだと邪推されること―。女性の多くがまるで通過儀礼のように経験してきた困難が、等しくエルにも降りかかる。それを自分ならではのアイディアと行動力で突破していくエルが、眩しい。
「働く女は、結局中身、オスである」のフレーズで雑誌が炎上したりもしたけど、それって、男性=ホーム/女性=アウェーの呪いが解けていないだけの話。本来は、性別にかかわらず、自分の能力や感性を正しく磨いて発揮すれば、自分もみんなもハッピーになるはずなのだ。
神田さんは正直「神田沙也加」以外の何物でもないんだけど、最高にキュートで頭の冴えたエルだった。物腰柔らかで紳士的な佐藤エメットに負けず劣らず素敵だった平方エメット。ちょいダサからビシッと決めたビジュアルの変化も最高で、久々に胸がときめいた…。(「王家の紋章」で既に一度、平方堕ちしている)平方くんに変わったことで、前回よりロマンス要素が強くなったのも面白い。長谷川さんのアクの強さ、樹里さん、木村花代さんのパフォーマンス力も健在で、ミュージカルとしてもしっかり堪能できた。他にも、脇を固めるのは実力派ばかりで、みんないい仕事をしている。とりわけ、エルのお友達兼コロスのまりゑさんがいつも以上に振り切れていて最高だったし、MARIA-Eさんの歌とダンスもエネルギッシュで目を引いた。
自己肯定力とミュージカルって相性いいんだろうな。思えば、この作品だけじゃなく、
『ライオンキング』も『天使にラブ・ソングを』も、『アリス・イン・ワンダーランド』も『レ・ミゼラブル』も、好きなミュージカルはみんなそうだし。「ハッピーミュージカル」って、単に明るく歌い踊ればいいんじゃなく、
こういうのを指すんだと思う。すっかりときめいたし(それはひとえに平方くんのおかげ)心がクリアになった。さぁ、仕事頑張ろう。