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『笑う男』@梅田芸術劇場メインホール 感想

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脚本:ロバート・ヨハンソン

音楽:フランク・ワイルドホーン

歌詞:ジャック・マーフィー

演出:上田一豪

出演:浦井健治 夢咲ねね/衛藤美彩(Wキャスト) 朝夏まなと  

   宮原浩暢 石川禅 山口祐一郎 ほか

そもそもの話…これ、なんでミュージカル化しようと思ったんだろう…?すでに「レ・ミ」や「ノートルダムの鐘」の先例がある、ユゴー×ミュージカル企画はわかるとして、なぜあえてこの作品を…全く盛り上がらなくない…?

あらすじ↓ 

17世紀のイギリスが舞台。コンプラチコスという人身売買集団に誘拐され、口の両端を引き裂かれたグウィンプレン(浦井健治)。幼い彼はある日コンプラチコスから吹雪の中一人捨てられる。そして赤ん坊であったデア(夢咲ねね)と出会う。その後、興行師ウルシュス(山口祐一郎)と出会い、ウルシュスはグウィンプレンの奇形的な笑顔と、盲人であったデアの話をもとに公演を創作し、流浪劇団を立ち上げる。やがて時は経ち、グウィンプレンは青年へと成長すると、欧州全域で最も有名な道化師となり、妹のように育ったデアと互いに愛情を抱くようになっていた。だがある日、グウィンプレンの前に、肉親を名乗る裕福な者が現われる。自分の出生の秘密を知らされたことで、平和であった3人の人生に新たな危機が迫る...。

 

キッチュな美術とあいまって、おとぎ話感が強い。(前にも書いたけど、韓国って、こういうサーカス的なアングラが好きなんだろうか。)1幕ラスト5分でミーマイ展開に、2幕はミーマイ&ボンベイドリームスと言った感じ。一応、寓話として見ることはできるけど、2時間半かけてこれ…?という内容の薄さ。やるならもっと貧富の対比やトラウマ的要素、(そして目の見えないデアとの関係性)を深められたのでは。

ゆう様のキャラ設定が定まらないおんじは想像通り。券売要員だとしてもミスキャストにも程があり、ただでさえ薄い物語が破綻してしまう。元々役柄として掘り下げられてもいないけど、浦井くんは、歌も芝居も居住まいも浦井健治夜神月かの二択。立ち姿や動きが何を着てもどの役をやろうとも(古代エジプトであっても)どこまでも日本男子で(だからデスノートが良かった)、…というか、すごく雑くて無頓着で、めちゃくちゃ気になる。ねねさんはしどころのない役ながら、娘役芸を発揮して柔らかな雰囲気。見どころは、朝夏さんと宮原さんの色情魔コンビ。朝夏さんは気品と色気の絶妙なバランス。抜群のスタイルでデコラティブなドレスを着こなして、美しかった。退団後、超ハイペースで、「マイ・フェア・レディ」、「オン・ユア・フィート!」 、「笑う男」ときてるけど、お芝居ではどれも違った役どころで爪痕を残していて、見てる側に「もうお腹いっぱい感」を感じさせないのはさすが。惜しむらくは、歌になると一気にトーンダウンしてしまうこと。カッコよく歌い上げる曲だけにもったいない。喉が詰まるような声の出し方、少しでも改善されるといいなぁ…。

宮原さんにはびっくり。初ミュージカルの「グランドホテル」では、伊礼くんとのWキャストで分が悪く、ハードルの高すぎる男爵役に苦戦していたのが、「ピアフ」を経てミュージカル3作目で、このクオリティ…!今までベルベッツでは佐藤さんに目がいきがちだったけど、宮原さんも負けてない。アグレッシブな芝居に安定した歌。タッパもあり、舞台姿も映える。この年齢で、濃い色悪的な役柄ができる人って貴重だから、これからもいいポジションで活躍してほしい…。

韓国はオリジナルミュージカルが盛んで、(脚本、演出は自国スタッフでなくとも)ちゃんと日本にも売り込めているのだから、日本もそういう作品作れればいいのにな。言い方は悪いけど、正直、このレベルの作品ですら売れるのだから。(ホイホイ買ってしまうのは日本だけということなのか…)

ちなみに、韓国版はカーテンコールで一節歌うだけでこれで、もしかして実は名作だったんじゃ…?と思えてくる不思議。

たとえ作品全体の出来が悪かろうが、この声が響く間だけは、作品世界がまばゆく光輝く。せめて、そういう瞬間がほしかった。