だらだらノマド。

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宝塚花組『A Fairy Tale』『シャルム!』@宝塚大劇場 ほか 感想メモ

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『A Fairy Tale』
ほぼ想像通りの内容。「ポーの一族」+「エリザベート」+「JAZZYな妖精たち」+「堕天使の涙」という数式で網羅できてると思う。「ポーの一族」も「エリザベート」も経験し、準トップ期間を含めると7年も主役を張ってきたみりおの仕上げが、何故、ただ美しく微笑むだけのこのしどころのない役なのか、答えは見つからなかった。始まって1時間は、ラストで記憶、時間、花園の再生をみりおとカレイの立場、花組に見立てるがための長い長い助走。妖精のみりおと出会う少女にトップお披露目の華優希さん。正直、お芝居ができるタイプとは思ってなかったのだけれど、彼女の持つ少女性が役柄にぴたりとハマり、痛いメルヘンになってしまうのをギリギリのところで踏みとどまっていた。ただ、彼女が青春を終えてからの辛い部分の設定や台詞があまりにもステレオタイプすぎて興ざめ。華さんがおばあさん時代も声をよく作って好演しているだけに、ここをもっと描き込むと面白くなるはずなのに、植田景子先生の今の関心事は植物(と猫)のみで、産業vs自然の主義主張が延々と続くだけ。この主義主張はカレイたちヴィッカーズ商会の社員たちの割台詞にされていて、これが単調でつまらない。確かに台詞の内容、割り方にも難ありだけれど、役者の力の問題でもあって、中でもほ帆純まひろさんが圧倒的に弱い。花組ではあまり感じたことがなかった弱みなので、ちょっとショックだった。一方、若手の筆頭株 聖乃あすかさんは白い薔薇の精。景子先生お得意の、みりおの影のようなファンタジックな役回り。ダンスだけで台詞一切なし。華さんの少女時代の影も2人いるけど、華さんが一番少女性が高いし、2人の入れ替わりや聖乃さんとの絡みもうまく機能しているわけではない。それに、そもそも精霊たちがわらわらいるJAZZYな妖精たち状態の中で、さらにそのファンタジックな役を足しこんでも過剰なだけで全く意味が感じられない。色々な意味で、とても残念な作品でした。植田景子先生はもう主義主張の世界から帰ってこないのでしょうか。。

 

『シャルム』
解説や挨拶文を読んで、稲葉先生が久々に本気を出したかと思いきやそうでもない。毒々しい色彩。みりおが意外なまでに退団者特有の研ぎ澄まされた空気感がなくって(最近だとみやるりにはめちゃくちゃ感じた)、割と思い入れのある方だと思っていたのに、黒燕尾の群舞も淡々と観てしまった。城妃美伶さんが毎シーン魅力たっぷりで退団が惜しい。

 

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ついでに、星組チェ・ゲバラ』@シアター・ドラマシティのメモも。原田先生×轟さんの偉人シリーズ最新作。『瑠璃色の刻』や『ドクトル・ジバゴ』と同じ感想すぎて、別エントリに書くまでもなかった。

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一言、脚本力と演出力の力量差が、観ててめちゃくちゃキツい。ドラマティックでもなければ繊細に人物を描けているわけでも、美しい台詞が散りばめられているわけでもない。イマジネーションと色気が欠如した脚本を、美しい装置にスムーズかつ的確な照明・転換で隙なく飾られたところで、逆に虚しくなってしまう。

轟さんはかっこよかった。前半、あんなに気張って若作りしなくてもいいのに。森で遭難してるうちに、いきなり声質も変わってワイルドに変身するので、逆に怖い。(人間不信になりそう)男役から転向した天紫珠李さんはヘルシーな美しさと芯の通った声で目を引く。でもこちらも気張りすぎて芝居が一本調子に。月城さんの代役 カストロ役の風間柚乃さんが好演。所作の幼さは骨太な体格でカバー。舞台度胸たっぷりに轟さんに食らいついていた。歌もしっかり聞かせるのは、さすが。蓮つかささん、晴音アキさん、輝月ゆうまさん達も心強く、OTTの感想にも書いた通り、月組、今一番役者が揃ってて、観るのめっちゃ楽しい。

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ところで、ドン・キホーテの話が何度か挿入されて、母曰く最後にゲバラが階段を上っていくのも『ラ・マンチャの男』やわ!とのこと。いっそのこと轟さんで「ラ・マンチャ」やっちゃいなよ!