だらだらノマド。

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『東海道四谷怪談』@南座 感想 +京都ミニ観光

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情報解禁からずっと楽しみにしていた『四谷怪談』。怪談なので元々そんなに上演される演目ではないし、歌舞伎の上演が少ない関西となるとなおさらで、関西では26年ぶりの超レア公演…!わたしがハマったのは、コクーン歌舞伎版(2006年)の映像からだけど、生で観るのは今回が初。これと『女殺油地獄』と『盟三五大切』は歌舞伎の中で一番好きなお芝居なので、またとない機会だと思って、怪談好きのK先輩と気合入れて行ってきた。

今回は、七之助がお岩さん、与茂七、小仏小平の三役早替わり。まずは幕開きの与茂七の声音が勘三郎そっくりで、!?となる。この与茂七がすっきりとした2枚目っぷりで、壱太郎くん@お袖もよくハマって相性の良い並びなだけに、お岩さんの死後に大きく物語が展開する三角屋敷の場がなかったのは残念。中車@直助権兵衛はニンに合った役柄だと思うし頑張りが伝わるものの、肩に力が入りすぎていて硬い。もうちょっと色気や軽妙さがほしい。あと、痩せているイメージはあまりなかったけど、袖をまくった時の手足が異様に貧弱でこれもまた男っぷりを下げてしまっていた。愛之助@民谷伊右衛門は想像通り。
お岩さんの相貌が崩れて髪梳きへと繋がっていく場面は、勘三郎だと凄絶だったけど、七之助はもっと静かに、悲哀が絞り出されるようだった。でも、彼女は伊右衛門が父を殺した下手人とまでは知らない…地獄の底の深さを思うと、ぞっとする。
南北が書いた『四谷怪談』と『三五大切』は忠臣蔵の世界観が同心円状に広がるスピンオフではなくて、垂直方向に下へ下へと広がっているのが面白いところ。『忠臣蔵』の松の廊下事件を発端に、武士の揉め事の皺寄せが下級身分の人たちまで及んで人生を狂わされる様を皮肉たっぷりに描いている。そして、社会の底辺で虐げられた女性は幽霊になってやっと世界を呪える力を持つ。今でも死んで初めて可視化、問題化されることなんてざらにあるわけで、わたしがホラーやゾンビものに興味があるのはそういう現実の恐ろしさが詰め込まれているからかもしれない。
改めて『四谷怪談』ってめちゃくちゃ面白い…。ストーリーそのもの、忠臣蔵外伝として、怪談として、歌舞伎的な見せ場、ケレン味の全部入り、強烈な力を持った作品っていうのが今回改めて分かった。ただ、隠亡堀の戸板返しは、ちょっと肩透かし。テクニカル的にもうちょっとやりようがあるのでは…?と正直、思ってしまった。
三角屋敷の場がない代わり、亀蔵さんの幕前おしゃべりタイムが。省かれた場面の説明や舞台となったスポットを解説しつつ、お岩さんが客席にお越しになっているかも…と煽り。大詰も仕掛けが多く、なかでも葛籠抜けは滾る!そして、なんとここで、亀蔵さんの言う通り、客席各階にも幽霊が現れ、ほぼこの間観たばっかりの貞子@USJ状態に。客席内大混乱だった。
 
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この日は夜の部だったので、以前から前を通る度に覗き見しまくっていた東華菜館へランチに。

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目を引く建物は大正15年に建てられた、ヴォーリズ建築。でも一番のお目当は日本最古のエレベーター。一時期、浅草十二階とかタワーにハマってた時期があったんですが、タワーに欠かせないエレベーターにも興味が出て、気になっていた。お店に入るとなんの心構えもないままいきなりエレベーター乗車。係の方が手際よくボタン、扉操作して着いたのが2階。なんと個室でした!正面には南座が見え、ヴォーリズ設計の家具(撮るの忘れた)もあって、タイムスリップしたかのようなレトロな空間。めっちゃテンション上がる。

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窓からは南座

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正直、かなりお高い割に料理はいたって普通だけど(写真すら1枚しか撮っていない)かなり贅沢な時間は過ごせるので、場所代と考えれば納得できる。

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帰りは心の準備をしてからエレベーターへ。

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4階も見せてもらった!装飾が多くて、こちらも素敵。川床もあるけど、断然、中の方が楽しいと思う。

 

ランチの後はぶらぶら。K先輩の解説付きで六道の辻を通って、有名なみなとや幽霊子育飴本舗、小野篁(といえば「花のいそぎ」)伝説の残る六道珍皇寺にも行った。

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お寺には冥土にも響くという迎え鐘があって、参拝客が鳴らせるようになってる。心静かに縄を引っ張れと書いているので、静かに引いてみても何も起こらず、ひたすら縄の押し引きを繰り返してたのですが、試しに力強く一気に引っ張ると鳴った。「心静かに」に惑わされた。
歌舞伎の場合、演目に合わせたこういうミニツアーも面白いかも。かなり充実した1日になりました!