2022年、芸術祭の年ですね!
2013年、2016年に直島に行き、2019年には豊島に行こうと色々予約してたものの仕事が立て込んでしまい断念。そうこうしてるうちにコロナがやってきて、気づけば3年経ってました…恐ろしい。ブログの順番がテレコになってしまったけど、大地の芸術祭前、9月末~10月頭に2泊3日で行ってきた一人旅の記録。
【1日目】
高松へ
朝ゆっくりめに、さくらに乗って新大阪から岡山へ。今回はsetowa(最近tabiwaにリニューアルした)というアプリで販売してる岡山・香川ワイドパス(3日間有効)を購入。マリンライナーの往復+400円の価格設定で、わたしはあまりウロウロしてないから数百円のお得にしかならなかったけど、倉敷や琴平の方まで行ったり、途中、小豆島に行ったりするのなら、かなり有効だと思った。
ただ、瀬戸芸秋会期的に言うと、高松〜小豆島間は、池田じゃなく、土庄港と結ぶ船が対象だったら良かったのに、と(それもあって、今回は結局小豆島に行ってない)。ちなみに、瀬戸芸公式で販売されてる共通乗船券は、小豆島〜新岡山のフェリー(おりんぴあどりーむせと)、あと、高松〜豊島はフェリーではなく高速船なので入ってないという、今回の旅程にとってはそれぞれ微妙に足りてない内容だった。
今回は歩きまくることがわかっていたので、小さいショルダーバッグとスマホショルダーだけでできるだけ軽量に、念のためパッカブルのリュックを旅行カバンに入れておく作戦を考えてたけど、マリンライナー車窓からの日差しを見て速攻カバンからリュックを取り出し日傘を入れた。なんでこの灼熱の太陽の中、日傘も500ml水もなしで歩けると思ったんや…。これまでの旅行記に綴ってきた通り、わたしが雨女すぎて、たいていの旅行が雨か曇りだから太陽を舐めてた節ある。
高松着。これまでの旅で見たことないくらいの快晴。2連泊するJRクレメントインに荷物を預け、早速高松港へ。このLiminal Airのたもとには「食のテラス」という日替わりのお弁当出店と屋根付きのテラスがあって、瀬戸芸秋会期中は売り切れるまで販売されているようだった(実際島から帰ってくる時もまだ売ってた)。
ここで海を見ながら食べるのも気持ちよさそうだったけど、船の時間があるので、バゲットサンドを買って乗船。
乗ってみたかった、ほぼ楳図かずお状態のしましまめおん。高松から女木島を経由して男木島へ。女木島まではわずか20分。
乗船室の後ろ側にも座席があるのと、客室の前側も通れるようになってるのも、ちょっと珍しい。
途中、小豆島の池田港と高松を結ぶ、しまぞうとすれ違った。
女木島
女木島到着!見えているのは港前にある案内所、おにの館。
おにの館のにゃん。
桃太郎の鬼ヶ島のモデルになった島ゆえに、色んなとこに鬼のモチーフがあった。
フェリーもそれなりに空いていたけど、上陸するとさらに人影はまばら。一人旅の人も多く、静かでのんびりとした時間が流れている。作品もそんな島の雰囲気にマッチしたものが多かったように思う。
港から洞窟までは距離があってバスが出ているものの、それ以外は全て徒歩で周遊可能。今回は、時間的に洞窟まで行くと慌ただしくなりそうだったから、徒歩圏内の散策のみに。(ちなみにこの洞窟へ向かうバスを運行する会社に色々問題があったらしく瀬戸芸ガイドブック記載のバス会社、時刻表じゃなくなっていた。)
海岸沿いには新旧の石垣が並んでいる。
最初に向かった「段々の風」に行き着くまでの急な坂道で早くも疲弊。
風が心地いい。
わたしは山側の田舎で生まれ育ってきたので、こんな風に日常の景色の中に水平線があると、それだけで興奮してしまう。嘘みたいにキラキラと輝く水平線。
むすびの家、秋会期からのこんぼうや(文字通り中にはこんぼうがたくさん)。
レアンドロ・エルリッヒの「不在の存在」。どこからか足音が聞こえ始めると実際に玉砂利に足跡がついていく。目に見えない何かが行き来しているかも?と目を凝らし耳をそば立てる。
感覚が鋭くなったところで、4人用のお膳と座布団が敷かれた和室に入る。手前の鏡には自分の姿が映るのに奥には映らない。存在してるのに目には見えない何かにされた(さっきの足跡をつけた何かのように)ような。実は奥の鏡はフェイクで、その先には鏡写しになったかのような部屋がもう一つあるという仕掛け。
女木島の中心的存在 寿荘にはポップで楽しい"お店"が集っていて、自然とコミュニケーションを促す。1階の吹き抜けにはピンポンシー。
コインランドリー(これもレアンドロ・エルリッヒ)も、片面は洗濯物がぐるんぐるん回る映像で、もう片面は本物のコインランドリーになっている。「不在の存在」から続く、鏡写しのようでズラされた面白さ。こういうアートと生活・商いがミックスされた、ゆる良い空気感が島全体を包んでいる。
一番好きだったのは、2階にあった五所純子さんの「リサイクルショップ複製遺跡」。まずハッとさせられるのは、大きな窓から見える海辺。
その砂浜がこちらまで伸びてきたかのように、壁やローテーブルには真っ白な漆喰が広がってて、宝物が埋まっている。気に入ったものがあれば、そこから掘り出して買うことができる。砂浜なら痕跡は波によって跡形もなく消えてしまうけど、漆喰から掘り出し、物がそこになくなってしまっても痕跡は残る。
1階のショップで、商売っ気のないおじさんからオリーブサイダーを買った。オリーブ感0の懐かしい駄菓子味。
うちの猫に似た、島にゃん。
機械仕掛けで連動し、時折オルゴールを奏でるナビゲーションルーム。
オルゴールタイムになると、きもい生き物が舌を出してくる。部屋の静けさと窓の向こうで水上バイクに乗るぱりぴの喧騒の対比がいい。
小学校を舞台にした大竹伸朗さんの女根。歌謡曲が響きわたっている。直島のI♡湯とも通じる昭和猥雑サブカルとその世界が荒廃し、それでも植物と溶け合ってやっぱり生きてるみたいな近未来SFのような世界。
倉庫を名画座に模した依田洋一朗さんの作品。
アステアとハン・ソロが並ぶ映画愛溢れる空間。こんな映画館が本当にあったら楽しいだろうな。
突然、猫のフィリックスの短編上映が始まった。ささやかなスクリーンと座席。リラックスしすぎたのか、座席の足元には、靴下が脱ぎ捨てられていた。
港付近に戻ってきて。
おにの館の休憩スペースで、朝買ったバゲットサンドを頬張る。食べ物を持ち込むのが安全だろうけど、鬼ヶ島倶楽部やHAKOBUNEのような、オシャレな店もいくつかあった。
そういえば、寿荘に行ったのに、宮永さんのヘアサロンとかカフェを見落としたことに気づいたけど、時すでに遅し。
再びめおん。
ソファスペースを囲む欄間に、象徴的な石垣が描かれていた。
なおしまとすれ違う。そっか、なおしまはカボチャもあるから?ドット柄で、そこから派生したしましま?
高松港着。
屋島
高松駅からJRに乗って屋島へ。島と名前はついてても島ではない。これまで宇野港を拠点にすることが多くて意識してなかったけど、実はここも瀬戸芸の舞台の一つで、壇ノ浦の戦いの舞台となった歴史ある場所でもある。
9と4分の3番線的に突如現れるホームから、2両編成の電車に20分ほど乗って、屋島へ。時刻表や車両編成を見て想像はしてたものの、思ったより辺鄙な駅だった。
ここから山上へ上がるシャトルバスは本数が少なく、行きはタクシーで行こうと思ってたのに一台もいない…(蘇る青森の悪夢)。でも、駅で紹介してくれた屋島タクシーに電話するとすぐ来てくれた。山上に今年新しくできた建物やしまーるまではかなり激しいグネグネ道を登って15分(1700円)ほど。
ここへ来たのは、「屋島での夜の夢」 というパノラマ作品と日没後にしか見られない「同じ月を見た日」のため。ところが、17時前に到着すると「屋島での夜の夢」はメンテナンス中で最速で18時からとのこと。(後々確認すると、実は瀬戸芸のパスややしまーるのHPにもひっそりと載ってたんだけど、気づいておらず。)
というわけで、映えるけど味のしないゼリー入りのクリームソーダを飲みながら1時間ほど時間を潰すことに。
蛇のような面白い形状のやしまーる。全面ガラス張りになっているのに一部ビニールシートで隠されている部分があり、疑問に思ってこっそり覗いてみると、裏にある水族館のバックヤードがガン見えで、あざらしが泳いでいた。
刻々と空の表情が変わる。日の入りが美しい。
いよいよ「屋島での夜の夢」へ。パノラマ館といえば19世紀に花開いた視覚文化のひとつで(映画によって淘汰されたこの手のエンタメって惹かれてしまう)、世界でも残り少なく、日本では古くに途絶えてしまったきりで、ここが唯一のパノラマ館になるらしい。この建物の構造とサイズ上、360度は不可能と分かりながらも、展示にしろアナウンスにしろ、あまりに多弁で「唯一のパノラマ」「パノラマ復活」推しがものすごいので、おのずとハードルが上がりまくり、実際のスケールとのギャップができてしまっていた。
実際は180°くらい?絵の手前側には精巧なジオラマもちゃんと作られていたけど、絵+鑑賞者の距離感、鑑賞者の目線とてすり位置の兼ね合いがパノラマの没入にふさわしいとは思えなかった。パノラマ館といえば戦争画が主流らしく、屋島にゆかりの深い源平合戦に虚実織り交ぜた内容。
外に出ると、月と「同じ月を見た日」も相まってスーパーマジックアワーになっていた。結局、このパノラマには何も敵わない。
パノラマ館の時間はバスとあまり連動しておらず、慌ただしくバスへ向かうことに。(バス停はやしまーる前ではなく、ちょっと離れた駐車場の中にあるので夜道を5分ほど歩く)
あ、あと、やしまーる開館時だけ夜帯もバスが行き来してるんだけど、夜帯はJRじゃなく琴電屋島止まり。でも、バスの行き先表示はJR屋島になったままだから、同じバスに乗ってたご年配夫婦が本当はJRまで行きたかったのに琴電屋島で降ろされて大変そうだった。(JRと琴電の駅は意外と離れてる)これは琴電屋島駅。
JRクレメントイン高松
朝から快晴の下かなり歩いたのでクタクタになって宿へ。ホテルクレメントの隣にあるJRクレメントイン高松。
この宿、アクセスが最高で、JR高松駅・高松港・琴電高松築港のちょうど中間にあるので、全部徒歩2分で行ける。しかも、18年にできたばかりで清潔感あって綺麗だし大浴場もあって、体の疲れをとってくれる。ただし、ドアの問題か気密性があまりないらしく、廊下の声がダダ聞こえてしまうのは残念だった。
引き続き、感染リスク低めの生活を送ってるので、夕食はうーばーで。せっかくの香川なので、おうどん。味濃いめの大きなとり天が美味しい。
翌日は豊島。元々計画してたスケジュールだと、家浦か甲生のどちらかしか回れない問題を解決すべく、頭痛と戦いながらヘロヘロ状態でスケジュールを組み直して就寝。