だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

3月 直島~犬島旅 その2(ベネッセハウス~犬島編)

その1はこちら。

kotobanomado.hatenablog.com

 

ベネッセハウス

地中美術館からいよいよホテルへ。

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ベネッセハウスはビーチ、パーク、ミュージアムオーバルの4つの部屋タイプがあり、前2つ、後ろ2つでバス停が変わるぐらい広範囲に渡っている。

私はもちろん一番お安いパークに宿泊。お安いといってもかなりいい値段がするので、ケチ心が発動して朝食だけ付いたプランを予約していた。(ちなみに、春以降さらに跳ね上がって5月とかえげつない…)

瀬戸芸会期外なのでそんなに混まないだろうと高を括っていたら、楽天トラベルの正月セールはすぐに埋まり、さらには全国旅行支援を適用させるため予約を取りなおそうとすると、元々予約していたパークツインは瞬く間に埋まり、欲をかいたばっかりに全国旅行支援を入れても金額プラマイ0のパークデラックスツインになってしまった。部屋タイプが色んな予約サイトにバラけてる分、それぞれ持ってる客室数が少ない&わかりにくいっていうのもあるよね…。

チェックインを済ませ、ベネッセパークのチケットももらってお部屋へ。まず目を引くのが海とお庭の見える大きな窓。

ここからはテラスに出られるようになっている。まだちょっと肌寒いけど、暖かくなったらずっといられそうな心地よさ。

天井は高い屋根型。こういう海外のリゾート感に憧れてたので、テンション上がる。

お部屋にはそれぞれ異なる作品が備え付けられているようで、わたしのお部屋はトーマス・ルフだった。

洗面台はバーカウンターとつながっていて、縦向きに使うというちょっと面白いタイプ。この奥にバスルームがあるので、カウンター裏にバスローブが収納されていたりと機能的でもある。

アメニティは、かつて汀邸でもらい、自分史上1番芳しい香りをまとって目をむいたTHANN。固形ハンドソープまでTHANNで、もちろん全てありがたく頂戴した。

パーク棟のB1階が昨年新たにできた杉本博司氏の「時の回廊」とのことで、早速行ってみる。

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ここも通常は地中美術館同様予約が必要なんだけど、宿泊者特典で無料、23時まで入館できるようになっている。限られた光源しかない薄暗闇の中にぼんやり浮かぶ作品たち。ついぞ辿り着けなかった護王神社の模型もあった。

ここを海側に抜けると「時の回廊」鑑賞者にお茶が供されるラウンジが。宿泊者は開館時間以外でも使用可でコーヒー、お茶類はフリーで飲める空間になっている。

このラウンジ内にも杉本作品が飾られていて、この屋久杉から作られたテーブルも作品のひとつ。

外には、ガラス張りの茶室 聞鳥庵が。京セラ美術館でも一度見ているけど、曇天と背景の海も相まって、京都よりも渋く馴染んでいる気がした。

kotobanomado.hatenablog.com

ここから続く廊下にも杉本作品。

その先のキラキラした廊下は、テレジータ・フェルナンデスの「ブラインド・ブルー・ランドスケープ」。

ここを進んでいくと、スパ、レストラン、ショップに繋がる。青森屋的なミラクルが起きないか、とショップを覗いてみるも、宿というよりミュージアムショップに近く、当たり前ながら夕食代わりとなるようなものはない。腹を決めなければ…と思いつつもお茶を濁してお庭へ。ニキ・ド・サンファールのエネルギッシュな作品が点在していて、生憎の空模様も華やかに彩ってくれる。

もしかしたら黄かぼちゃをこんなに間近で見るのは初めてかもしれない。

部屋へ戻り、とうとう腹を括る。和食、フレンチレストランのうち、フレンチなら今からでも飛び込みで入れるらしい。ま、元から嫌な予感はしていたけど…ケチったくせに結局この有様…。とはいえ、コロナになってから旅行先以外での贅沢ランチやディナーの機会が全くなくなって何年振りレベルのフレンチコースだったので、これでよかったんだ…これで…(と自分に言い聞かせる)。

ここも天井が高く、開放的。

とりわけ鰆のマリネ(って言ってたような‥)がまるで生ハムのようなねっとりとした食感と旨みで絶品だった。美味しかったし食べてよかった…高いけどね…。ごちそうさまでした!

ベネッセハウスミュージアム

夕食の後はベネッセハウスミュージアムへ。ここは21時まで開館していて、宿泊者は23時まで入れる。一度体験してみたかったナイトミュージアムの夢が叶った。
ちなみに、宿泊者専用バスの最終便は19時台だけど、フロントに声をかけると、パーク・ミュージアム間は乗用車で随時送迎してくれるという嬉しいサービスが。

ここも3度目のはずなんだけど、こんなだったっけ…?展示内容が変わったからか、写真にない作品も含め、新鮮に楽しむことができた。

太巻のようなヤニス・クネリス。

東京オペラシティの巨大な「シンギングマン」の小型版、ボロフスキーの「3人のおしゃべりする人」。夜間だからか残念ながらおしゃべりしてくれず。

ジェニファー・バートレットの「黄色と黒のボート」。平面と立体のリンク。翌朝、宮浦港へ向かうバスの車窓から、海岸沿いに全く同じ黄色と黒い小舟が見えた時はびっくり!

リチャード・ロング。

ここの吹き抜けにも圧倒される。ブルース・ナウマン。LIVEたまにDIEが光る。たった一つのネオンなのにコンクリの壁を煌々と照らす(もちろんここも安藤建築)。

ナイトミュージアム、楽しい!

夜見るとSF感が出る大竹さんの「シップヤード・ワークス 船底と穴」。

じっくり堪能して、ホテルへ戻る。せっかくなので、部屋にあったBOSEのスピーカーで、ふんわりとワールドミュージックを流してみる。リゾート気分で就寝。

朝食

朝食も昨晩と同じテラスレストランへ。時間指定はなかった。ややこじんまりとしたブッフェ形式で、オムレツ、スクランブルエッグなどの卵料理はオーダーすると出来立てを席まで持ってきてくれる。スクランブルエッグは瀬戸内海のさざなみを表現しているらしい。

テラスの先はリアルさざなみ。

お昼から雨予報のため、当初の予定を変更して朝の高速船で犬島へ。ささっと身支度を済ませチェックアウト。宮浦港までバスで。昨日美術館で見たはずの黄色と黒の小舟が海辺に見えて二度見したり、崖に杉本作品があったりと、車窓を楽しみながら、まだまだ拾いきれてない作品が色々あるなぁと悔しく思う。次に来る時は、シーサイドギャラリーや屋外に点在する作品もじっくり回ってみたい。
ところで、陽気なバス運転手さんで日本語、英語で交互にジョークを飛ばしていたんだけど、英語版が全くウケていなくて心配になった(余計なお世話)。

犬島へ~家プロジェクト

宮浦港 海の駅に着くと、船のチケットカウンターにちょっとした行列ができていた。豊島・犬島行きの高速船はすでに満席でなんと立席。

www.shikokukisen.com

でも、豊島 家浦港に寄港すると、8割方降りて行ってガラガラになった。直島から犬島までは意外とかかって1時間弱。高速船にこんなに長時間乗ったのは初めてかもしれない。

犬島着。フェリーは来ず小型の船が行き来するだけなので、港というより船着場という言葉の方がしっくりくる小ささ。ところが、それとは裏腹に港近くにあるショップとカフェ併設のチケットセンターがやたらとシュッとしている。ここで、鑑賞チケットと帰りの船のチケットをまとめて購入。

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家プロジェクト+犬島精錬所美術館どちらも回れるチケット。

雨が降り出す前に、まずは、島内に点在する家プロジェクトから回ってみる。

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名和晃平さんのF邸「生命の誕生」。入る前に気になりすぎる祠が見えた。

生命誕生のビッグバン。

壁を吹き飛ばしたかのような勢いのモクモクの先には、それぞれ動物、植物に派生した世界。人間代表は、”レンくん”という実在の人物らしく、リアル レンくんの成長に合わせて、作品のレン君も成長(再制作)されたらしい。

こういう道を巡っていく。去年行った女木島と同じく、徒歩でゆるゆる巡れるサイズ感なのが嬉しいし、田舎育ちなので車が来ない道が本当に落ち着く。

淺井裕介さんの「石職人の家跡」はまさに遺跡風。古代の壁画のような紋様が所狭しと描かれている。

続いて、荒神明香さんのS邸「コンタクトレンズ」。犬島の家プロジェクトの建築はすべて妹島和世さんなんだけど、これなんか、いかにもな気がした。

そのすぐ近くには、S邸とは打って変わって色彩豊かなベアトリス・ミリャーゼス のA邸 「Yellow Flower Dream」。

家プロジェクトを回ってる間、スタッフ以外の観光客や住民に会ったのはほぼ会わなかった。現在の犬島の住民は約40人ということで、このS邸、A邸の周りなんか人がいないどころか廃屋しか立ち並んでいなくて、現在進行形の生活が存在していない。まさにさっき見た「遺跡」のように存在している。

そんな中に奇天烈なアート作品がオーパーツ的に鎮座しているとなると、もはやここどこですか状態で、人類が滅んだ後の近未来か異世界に迷い込んでしまったか、みたいな、かつて経験したことのない心地になった。究極のStranger気分。

馴染んでいるようないないような、東屋前を通る。

この辺りにやたら立て看板が立っている「ハウスプロジェクト」という家プロジェクトのパクリ企画が気になり、行ってみる。巨大ガレージ犬がいた。

www.inujimahouseproject.com

途中、週一しか稼働しない小さな診療所を見かけた。神社とか洞とか掲示板とかもだけど何かしらの「暮らし」を発見できた時、いつもなら特に気にもとめないのに、尊さを感じずにはいられない。

引き返して、半田真規さんのC邸 「無題(C邸の花)」。ここだけ撮影NGだった。曲がりくねった梁と、床に並んだしゅっとした花の軸と葉っぱ。

そのまま海岸の方へ進むと、オラファー・エリアソンのI邸 「Self-loop」。お庭の付いた一部ガラス張りの建物。

中に配置された鏡は、黒いわっかを視点にすることで合わせ鏡になって外の景色と自分の後ろ姿が無限に続いていく。

さらに海へ向かって進んでいくと、待ち構えていたかのように、淺井さんの壁画的紋様が現れる。

かわいい。

犬島精練所美術館

犬島中心部をぐるっと一周回ってきて、犬島精錬所美術館へ。

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「茶色」「煙突」くらいしか予備知識を入れずに来たので、まずあまりの広大さにたじろぐ。1909年に完成し、第一次世界大戦後の銅価格の急落によりわずか10年で操業を終えた銅製錬所跡地。

至る所に、銅の製錬時に排出される残り滓を原料に作られたカラミ煉瓦が敷き詰められている。

どことなく、10年くらい前に行った友ヶ島に似た物悲しさを感じさせた。

遺構の中に、三分一博志さんによって新たに建築された古墳のような建物が。

館内は撮影NGなので写真はないんだけど、柳幸典さんの大掛かりなインスタレーションを順を追ってめぐる体験型ミュージアムになっている。暗闇の中、太陽に追われつつ光に向かって一本道(ある仕掛けがある)を歩いて行ったり、工業資材、資源と生活道具が暗闇に並んでいたかと思えば、一気に空が開け、扉が風に揺れる幻想的な空間も。単純にワクワクする体験の連続だった。

ただ、最後にこの美術館のコンセプトムービーが流れてて、ちょっとそこまではわからなかったですけどね‥とはなった。↓からしてちょっと多面的すぎるよね。

「在るものを活かし、無いものを創る」というコンセプトのもと作られた美術館は既存の煙突やカラミ煉瓦、太陽や地中熱などの自然エネルギーを利用した環境に負荷を与えない三分一博志の建築と、日本の近代化に警鐘をならした三島由紀夫をモチーフにした柳幸典の作品、また植物の力を利用した高度な水質浄化システムを導入しています。

遺構の奥へと進んでみる。

発電所跡。

家プロジェクトと感じるのは一緒で、圧倒的「過去」。

犬島にとっての時間軸的ハイライトは、良くも悪くも、この精錬所が稼働していた10年間(4.5000人暮らしていたらしい)。ある種のドリームが生まれたのもつかの間、それが瞬く間にしぼんでいき夢破れた地でもある(インスタレーションの三島との結びつけの弱さを感じでいたけど、彼の人生を考えると、なんかわかったような気がしなくもない。)。アートは、そんな圧倒的過去が支配する「遺構」に抗うでもなく、ただ静かに対峙する。そして、私たちはそこに迷い込むStrangerになる。

チケットセンターのおしゃれカフェでランチ。ちなみに、島内にはいくつかカフェっぽいものがあったけど、この日はお休みだった。

意外とがっつりご飯が食べられてよき。鯛茶漬け御膳。お吸い物兼お茶漬けだしがちょっと微妙でそのまま鯛めしとして食べた方が美味しかった。

滞在約3時間。遺構をゆっくり巡るにはあと30分欲しかったところ。でも何とかお天気がもってくれたのは良かった!

さて帰りは、当初、犬島→宝伝港→岡山というルートにしようと考えてたんだけど、宝伝港とJRの駅を結ぶバスが廃線になった(瀬戸芸期間中だけ岡山との直通バス運行)という恐ろしい情報を目にして、豊島→宇野港経由で帰ることに。(タクシーで行けるっちゃ行けるけど、わたしのポリシーとしてできるだけ公共交通機関を使いたいので‥)

でも、4月以降犬島に行く人に朗報!チケットセンターに貼られてた情報によると、日に一本だけ出るみたい。そして今、両備バスHPに情報を見つけたので、貼っておく。

www.ryobi-holdings.jp

豊島へ。所要時間は25分程。

豊島 家浦港着。まさか半年足らずで再上陸するとは思ってなかった。乗り継ぎまで20分程なので、港周りをうろうろするだけだったけど、妙に嬉しかった。各島へ向かう船のチケットカウンターを眺めていて、豊島フェリー(高松~豊島)、四国汽船(犬島~豊島)、これから乗る小豆島豊島フェリー(宇野~豊島)で、各社網羅できたことに気づいた。

初、船の乗り継ぎ。フェリーてしまがお休み中でめおん2が代船に入ってた。

www.shodoshima-ferry.co.jp

普段女木島・男木島に行く船なので、船内には2島の観光情報いっぱい。宇野には40分程掛けてのんびり移動。

一瞬だったけど、さよなら…豊島。

宇野港着。

ちょうどこの時間帯の宇野~岡山の電車がないので、バスで岡山へ。バス停は駅前ではなく、港前にあった。電車より若干時間・運賃ともかかるものの、乗り換えを気にせず爆睡できるので、ありかも。便数も結構ある。交通系CカードOK。

www.ryobi-holdings.jp

岡山からは前回買って気に入った鰆丼を買ってひかりでゆるゆる帰った。

azumazushi.ecgo.jp

まとめ

豊島が好きすぎる気持ちは変わらないんだけど、それでもやっぱり直島がアートの島々の玄関口だし、軸になってるんだなというのを再認識した。作品数や規模というだけでなく、光・暗闇のような普段何気なく見過ごしている身近なものに焦点を当てているもの、疑ってみるものが多くて、知覚に向き合うきっかけをくれるというか。まだまだ触れられていない作品も多いので、また行ってみたいし、ベネッセハウスはさすが快適な素敵宿だったので、今度は安いシーズンを狙って晩御飯もセットにしたい…。

そして、癖の強い犬島。各島それぞれの個性を肌で感じながら(これはなかなかガイドブックとかだけだとわからず、実際に体感してみてようやく腹落ちする)、自分の体験した作品同士、島同士が響き合って、より大きな体験に繋がるの本当に楽しい。

直島、豊島、犬島は瀬戸芸期間外でもたくさん作品が見られるし、島を移動しながら数珠つなぎ的に体験できるので、春~秋の旅行にぴったりじゃないかな。個人的には、別にアートに詳しいとか特段好きなわけじゃなくても、ド定番の観光スポットからちょっと外れた非日常を味わってみたい人にも合うし、一人旅にもめっちゃ良いスポットだと思う。みんな、島行こう!

benesse-artsite.jp