その4では、松本を観光して湯田中温泉に泊まります(4泊目)。
その1〜3はこちら。
旅館まつもと朝食〜松本へ
早起きして朝風呂へ。昨夜に続いて残念ながら貸切風呂は開いてなかった。
身支度を整えて朝食へ。夕食から一転、オーソドックスなメニューが並んでいる。朴葉焼きって分布範囲広いんですね(岐阜でも新潟でも出た)。卵焼きは甘め、鮭の塩焼きがジューシーで、添えてあるわさび漬けがアクセントになってまた美味しい。
朝の中庭。
館内案内図。お食事処から帰ってくる時に「バーひびき」はかろうじてチラ見したんですが、結局全体像がよくわからんまま終わった(極度の方向音痴)。そして今更ながらこんなあらゆるところに道祖神いたんか…。コンプリートしたかった。
アートバスで大町を巡ってる時からなんか道祖神多くない?ということに気づき始めてたんですが、長野は全般的に道祖神信仰が盛んなんですね。道祖神って往来する人たちを遍く見守るイメージを勝手に抱いてたけど、各集落に疫病を持ち込まないための結界であり境界でもあるそう。なるほど。
フロント脇の松本民芸が並んだラウンジでもゆっくりしたかったのに時間があまりなくそそくさとチェックアウト、出発することになってしまったのが心残り。
帰りもバスで。バス停からの光景。ここにこんな鄙びたお宿があるなんて信じられない。
松本着。気温15度です。。
松本市美術館〜まつもと市民芸術館
まずはタウンスニーカー(周遊バス)に乗って松本市美術館へ。アルピコバスターミナルではなく駅前から出てました。
入口からエネルギッシュな草間彌生さんの作品がお出迎えしてくれます。
この時期はコレクション展しかやってなかったこともあってそこまで期待していなかったのですが、大型インスタレーション、永遠に続くような「天国への梯子」、脈打つ「ゴッドハート」、息を呑むような美しい光の空間が無限に広がるインフィニティミラールーム「魂の灯」(20秒交代制!)から最新作まで草間さんの作品を網羅的に観ることができ、鏡と水玉模様を駆使した無限の幻想性と強迫的かつ狂気的ですらある生命力のせめぎあいを堪能しました。大満足!芸術祭常連だし目にする機会は多いけど、個展は見逃しててこんなにまとまった作品群を見るのは初めてだったので、いい機会になった。
この作品ラインナップだと思わず写真を撮りたくなってしまうけど撮影OKなのはこのかぼちゃ(「大いなる巨大な南瓜」)のみ。確かに全部OKしてしまうと撮影会が始まってしまうよね…。ちなみに、このかぼちゃ、黄色かぼちゃの中では最大級らしい。
ミュージアムショップで松本水めぐりという面白いマップがあったので購入。方向音痴なので地図読めないけど…。現代と江戸時代両方載った地図には水に濡れたら色が変わるという仕掛けが施されていて、松本の水を巡る歴史案内になっている。包み紙まで美しすぎた。
建物の側面にも草間さんの作品が。コカ・コーラも巻き込んで、ベンチや自販機まで水玉一色。
美術館から道を挟んだところにあるのが大小3つの劇場を擁するまつもと市民芸術館。
今は石丸幹ニさんに替わりましたが、串田和美さんが長年芸術監督を務めていた劇場で、串田さんが演出を務めるコクーン歌舞伎のツアー公演をよくやっていたのですよね。
そして『天日坊』の千秋楽1日だけ療養中の勘三郎丈が舞台に立った、つまり彼が人生最後に板の上に立った劇場でもあって。今この映像見ても涙出ますが…そういう意味でも一度来てみたかった劇場でした。
設計は伊東豊雄さん。壁の歪な水玉模様が印象的で、奇しくも松本市美術館と呼応しあってるように見えるのも面白いです。中には窓になっているものも。
2階は白と落ち着いたえんじ色の空間が広がります。フリースペースの方は、壁からカーテンに水玉が受け継がれていくのも面白い。大変美しい劇場でした。
松本城〜ホテル花月
続いて松本城へ。平日なので余裕ぶっこいてたら天守入口まで30分待ちでした。
松本城は天守が現存する数少ない城の一つとして国宝に指定されているお城。戦国時代に作られたベース部分と江戸時代に歓待用として増築された月見櫓が一つになって天守群を構築してるらしい。街の真ん中に起伏なくある珍しい平城なのでどうしても山城に比べて防御力には劣るけど、お城の周りには川が多く流れていて、自然のお堀の役目を果たしていたそう。
なんせ天守6階まであるため、見学はガチガチに順路を固めたツアー方式。かなり急な階段を上り下りすることになります。
こんなスパイ道具見たいな鉄砲も昔からあったんですね。
6階からの眺め。
面白かったのは天守3階。外からは五重に見えるのに6階建てなのはこの3階部分の存在が隠されているからで、南側からしか明かり取りがないので、とにかく暗い。普段は倉庫利用されていたらしいけど、有事の際は敵から居場所が知られないこの階に武士が集ったという説もあるらしい。この暗闇の中にひっそりと武士が集まったかもしれないと思うとちょっとドラマチックに思えませんか。
帰りは江戸時代に増築された櫓の方から出るのですが、ちょうど耐震工事中で貴重な床下の様子がのぞけました。
お昼を食べに、ここから5分ほど歩いて松本ホテル花月の喫茶室 八十六温館へ。花月は明治時代創業の歴史あるホテルで、当初宿泊先の選択肢に入ってたので来て見たかったんです(温泉がないのがネックで最終的にすぎもとへ)。
松本民芸家具の創始者、池田三四郎さんが監修を務め創業当時の趣を今に残した素敵空間なのですが、端っこの席だったのでなかなか店内の様子が伺えず。観光客よりも意外と地元の人が多そうな雰囲気でした。
ハッシュドビーフ。
このホテルがある通りは上土通りというようでかなり風情があった。
というか、ここや有名なナワテ通りや中町通りに限らず、大通りも路地裏も古くから続くお店や建物と新しいお店がいい具合に混じり合っていて、それが京都みたいに変に気張ってないというのか(ナチュラルに京都をディスるな)自然体でありながら、城下町としての誇りと愛着は十分に感じられてとっても居心地よかった。これは松本だけでなく今回訪れた長野のエリア全てに言えるかもしれません。
松本市立博物館〜湯田中温泉へ
松本市立博物館は23年秋に松本城公園からより駅に近い大名町に移転リニューアルオープンしたばかり。
松本てまりを乗せたモビールが大階段の上を彩ってます。
フリースペースには松本民芸家具も。
常設展のみ拝見。道祖神コーナーがあってほくそ笑みました。
道祖神の嫁入りの話も面白い。
お八日、かなり激しくないですか。こういう土地に伝わる祭とか行事って本当に面白い。
七夕人形も可愛げあります。スタイル抜群。
博物館のために作ってもらったおニュー道祖神も。
時計博物館は外から眺めたのみ。大きな振り子が目印。
駅までは徒歩で。松本駅は1階に特産品を集めたお店があって、コンビニがお土産に特化してたくらいで意外と商売っ気がない感じ。
特急しなので長野へ。松本~長野のアクセスはあまり良くない。特急で約1時間。特急に乗るとかなりお値段も張ります(長野は電車もバスもちょっと料金設定高めな気がした)空港から長野駅方面へのバスがないのも辛い。
長野オリンピックのロゴが残る長野駅。船木ー(泣)。すっかり晴れました。
ここから長野電鉄で湯田中へ。長野電鉄の駅がJRとは打って変わって恐ろしくレトロでした。でも電子マネーで切符買える。
いろんなものが長机に並べられていて、刺身わかめとかも買えます。すごい。
湯田中まで電車に乗ること1時間20分ほど(途中乗り換えあり)。遠い‥な‥。途中疲労困憊で意識を失いかけながらなんとか到着。駅から今日の宿 よろづやまでは徒歩7分ほどなのですが、坂道が続くのでお迎えのバスが来てくれました。事前に依頼する必要があるけど、電車の時間に応じて柔軟に対応してくれます。
よろづやと渋温泉散策
本日の宿よろづやです。
中に入ると美しい吹き抜けになっていて思わず声が出た。
2階のラウンジはウェルカムドリンク、コーヒー、紅茶、デトックスウォーターをいただける落ち着いた空間。
最もリーズナブルなお部屋でしたが、がっつりお風呂場もありました。
夕食まで時間があるので渋温泉まで行ってみることに。途中、共同浴場があって、猫に懐かれているお爺さんが入っていきました。
これは一体…形的に同祖神ではないんだろうけど…。
どんどん暗くなってくる中、道を間違えてよくわからない道に来てしまい怯えていると(写真は明るいけど実際はもっと暗い)坂道を下った途端温泉街が開けました(ここで脳内に鳴り響く「千と千尋の神隠し」の「誰もいない料理店」)。
なんて鄙びた温泉街なんだろう。全部が全部そうでないかもしれないけど、長野の街も温泉地も変に観光地化せずあるがままにそこにある感じがして、もちろんそこには隠れた努力があるんだろうけど、本当に好きです。ね、素敵でしょ。
そして、金具屋。言わずと知れた「千と千尋の神隠し」の油屋のモデルの一つになったと言われる旅館。海外の団体さんも見学に来てました。
細い路地から見上げる形になるので全体像が見えないのが残念だけど、美しいです。
金具屋の真向かいには半地下状になった渋大湯。ここは9つある渋温泉の外湯のうち唯一渋温泉宿泊者以外も入れる外湯なのですが、17時で閉まるため残念ながらあと一歩で入れず。宿に鍵を借りて入るというシステムも独特で面白そう。
帰りは無事正しい道で帰って来れました。正しいルートだと15分くらいで湯田中温泉街と行き来できます。
「千と千尋」大好き人間としては、油屋のモデルが金具屋だとかそういうレベルじゃなく、あの作品では長野の温泉とか神様のありようが息づいてるんだろうな、と腑に落ちた有意義な散歩でした。
帰ってきてお食事へ。お食事どころは半個室スペース。昨日の日本酒で限界を迎えたので今日は大人しく桃・ぶどう・りんごのジュース飲み比べ。流石に美味しい。
お料理は、うーん…昨日が素晴らしかっただけに特に驚きはなかったです。
一休みしてから、この宿のシンボル的存在桃山風呂へ。
今年で70周年を迎え、登録有形文化財に指定されているお風呂。21:30までだったかな?で、もう一つの東雲風呂と男女交代になります。桃山風呂は脱衣所に入った瞬間からもう圧倒的(翌朝撮影できたので詳しくはその5で)。そして、浴室に入ると大きな丸い湯船と奥には蒸し風呂の掲示が。さらに、露天風呂へ出ると、露天もまたダイナミックかつ桃山風呂の唐破風屋根がライトアップされて荘厳ささえ感じるほどでした。
内湯、露天ともにお湯はやや熱めで心地よく、客室数が意外と少なめだからか贅沢にもほぼ貸切状態で楽しめて大満足でした。
ちなみに、超ラグジュアリー価格だったので試せてませんが、よろづやには去年できたばかりのプライベートスパ梵が。桃山風呂を筆頭にお風呂に力を入れる意気込みは伝わってくるけど、若干それじゃない感はした。
以上、その4でした。ラストその5は長野駅周辺を巡ります。