だらだらノマド。

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『ダディロングレッグズ』@シアター・ドラマシティ 感想

紛れもない名作ミュージカルだった。性格がひねくれていて「名作」と呼ばれるものに対して疑ってかかるという悪い癖があるわたしですら、そう思った。

元々、興味のある手紙のパフォーマンス性というテーマということ以上に、連呼するようになって久しい「距離(ディスタンス)」をこんなにも美しく繊細に描いた作品が、今上演されることの巡り合わせに感激してしまった。

というのも、登場人物はジルージャとジャーヴィスの二人しかいない。ただし、ジルージャ的には3人というべきかも。「ダディロングレッグズ」の正体は実はジャーヴィスなのだけれど、ジルージャはそんなことはつゆ知らず彼をよぼよぼのお爺さんだと思い込んでいるから。大学生活で起きた悲喜こもごも(そこにはジャーヴィスも登場する)を知性とウィットとユーモアに富んだ瑞々しい文章で手紙に綴る。ほぼ全編、このジルージャが「ダディロングレッグズ」に宛てた手紙の朗読で進んでいく。といっても静的なわけではなくて、ジルージャが感情豊かにしたためる手紙の言葉に、読み上げるジャーヴィスが時に共感、時に驚きや落胆を持って、情熱的に呼応し合う。

この物理的な距離も時間的なズレも一気に飛び越えて、舞台上で渾然一体になって心が響き合っていく高揚感ときたら…!そして、そんな二人が、最後にやっとゼロ距離でギュッと抱きしめ合うなんて、もう反則…!あー!演劇ってこういうことー!(興奮)

日々の暮らしの中で、他愛もなく、見過ごされがちなことを言葉で優しく掬いあげてみると、それをきっかけにして、相手の成功を自分のことのように喜べたり、ちょっとした困難を笑い飛ばせたり、些細な幸せを見つけあったりできる。言葉が生きているってこういうことを指すんだなと思ったし、その言葉が二人の暮らしにフィードバックして更に日々を積み重ね、言葉を紡いでいく姿に、人生ってこういうことでは…という気になったんですよね。あー…This is演劇…!(再び興奮)そして、私もこんな人生を送りたい…(絶叫)!!

 

セットは機能的かつミニマムにできていて、大きく分けると、後方の段上がりがジャーヴィスの書斎、前方がジルージャの通う大学になっていて、窓を開けたり、トランクや木箱の中身を出し入れする、あるいはそれを移動して組み合わせたり、本棚の奥のスクリーンに背景を映し出して本棚の隙間から見せることで、別のシチュエーションを生み出している。まさに、ジルージャの言う「想像力」がふんだんに詰まった舞台。特に、ジルージャが病に伏せってる時に届けられるお花の演出が最高に好きだった。

ところで。

これは心底感じている。真綾さんと芳雄さんの言葉の力の相乗効果。芳雄さんでいうなら、手紙から言葉に広げると、「夜と霧」「アルカディア」「組曲虐殺」なんかも入ってくるけど、全くハズレがないんですよね…。これからも芳雄さん×言葉は絶対にチェックする。