だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

7月のたしなみ。

今更7月のメモを掘り起こしてくる度胸…。たった4か月前にはこんなに悠々自適な暮らしをしてたんだな…と振り返って、悲しくなりました…(遠い目)

シアターコクーン「プレイタイム」

大手の映像配信だから見てみるか…ぐらいのテンションで視聴。舞台再開に向けての通過儀礼のような作品で、もうお見事でした。前半は劇場のバックヤード(奈落、キャットウォークなど)を縦横無尽に1台のカメラが探索していく。森山未來氏や黒木華氏の台詞(の稽古だとのちに分かる)にクローズアップしたかと思えば、普段なら客席から聞こえてはならないノイズ(舞監らのQ出しの声や機構の駆動音)を伴ったスタッフたちの動きへと焦点がシフトしていく。

映画はいったん映像作品として完成してしまえば、あの薄いスクリーン1枚にイリュージョンが凝縮されてしまう(それはそれですごい)一方で、演劇という行為は、お客さんから見える範囲が舞台上に限られているだけで、まるでイマーシブシアターのように(プレイタイムの第一印象は「イマーシブシアターみたい!」だった)大勢があらゆる場所で同時多発的に動き、それが多層的に組み合わさることでようやく作品として立ち上がる。実際に同じ空間内で同時多発的に起きているのに、お客さんたちが直接目にすることのない人たちの息遣いを「映像」で見るというねじれと、劇場内を彷徨わせてあえて遠近感を狂わせながら、舞台の持つ多層構造を体感していくという仕掛けは、コロナでありとあらゆる演劇がクローズになってから絶えず問われていた「生か映像か」の単純な二項対立じゃなく、「そもそも演劇という行為や劇場空間とは何なのか、そして、私たちが生で観劇して”やっぱり生はいいよね!”という時、果たして本当にそれをまるごと実感できているのか」という、演劇の根っこの部分への問いと答えのように感じました。
と同時に、劇場という観点から見ると、あらゆるセクションスタッフの手によって劇場の器官が徐々に動きだしたり(手引きバトンというのがまた!)、劇場に響くまるで咆哮のような機構の駆動音は、劇場が大きなひとつの生命体であるかのような息吹きを感じさせて、演劇や劇場の概念が揺さぶられるくらい驚いたし、劇場再始動というテーマからしても最高の演出でしたね。
ただ、演劇として見ると、岸田國士戯曲である必然性が見えず、前半のインパクトがあまりに強いので、本編で一気にトーンダウンしてしまう感はありました。ちなみに、前半部分は、原案でクレジットされていた、梅田哲也さんの「インターンシップ」が軸になっているようですね。以来、梅田哲也さんを猛烈にチェックしている。

TOHO MUSICAL LAB

東宝の無観客舞台。オンライン配信ありきの作品制作に興味を持ったので観てみました。約30分のオリジナルミュージカル2本立て。

1本目は「CALL」。(作詞・脚本・演出:三浦直之)

とある森、ガールズバンドが誰もいない「静寂」に歌い語り掛けながら、人知れずライブを行っている。やがて古ぼけた演劇の衣裳を見つけ出してきて、そこが朽ちた劇場であることがわかる。どうやら、単に劇場が潰れて廃墟になったというより、もはや「演劇」や「観客」の概念すら朽ち果ててしまった近未来らしい。

ここでは、私たちが今まで当たり前のように捉えてきたパフォーマーと観客の関係性は存在せず、パフォーマーは静寂に向き合い、見えない誰かに届くよう一途に祈りを込めている。クラップ、タップが静寂に響き、溶け合っていく。この朽ちた劇場には専門のドローン ヒダリメがどこからともなく登場して、バンドメンバーのミナモに、かつての華やかな劇場の記録を見せ、歴々の作品から観客の記憶を手繰っていく。このシーン、舞台から客席へと移動しながら(撮影大変そう)かつての観客に思いを寄せるのが最高にエモくて、(演劇通のフジワラさんとミズハシさんの席位置が回を重ねるごとに近づき)「惹かれ合ってんじゃん…!」っていうミナモの台詞は、とりわけキラキラと輝いていた。ここで舞台上にオドリバが現れて、客席側にいる二人は「観客」となり一度消え去ってしまった関係性が再構築される。さらには二人も舞台上へ加わって大団円を迎える。

ORFの歌番組がそうだったように、あえて客席の不在やライブパフォーマンス消滅の危機感をテーマにしてかつての記憶を辿りながらも、パフォーマンスが結ぶ関係性や可能性を新たに見つめ直した作品でした。要所要所でロロのエモさが光り、なおかつ3年位前からひそかに推している田村芽実さんが今回も芝居も歌も一際輝き、エモさに拍車をかけていて、あー、好き!となりました。

2本目は「Happily Ever After」。(脚本・演出:根本宗子)

根本さんは「クラッシャー女中」でかなり引いてしまってたんですが、今回はかなりオーソドックス。時間を共有しすぎて関係性が拗れてしまう現実世界と、夢の中の触れられない誰かとの邂逅。このコロナ禍における煮詰まりすぎる人間関係の不満と、片や人と接したり出会えない不安っていう両極端な悩みがコンパクトかつロマンチックに描かれていた。

この作品で驚いたのは音楽。清竜人さんの軽やかで耳ざわりの良いメロディは音域が広く歌いこなすのは難しそうだったけど、ミュージカルの風格あり。さすがの海宝先輩が目をむくようなスキルで難なく歌いこなしていて、ミュージカル満腹中枢が上がりました。

劇的茶屋「芝浜」

www.gekitekichaya.com

落語ミュージカルのオンライン配信企画。配信視聴に合わせて楽しめるよう、松竹梅のチケットランクに合わせた、お茶とお菓子が送られてくる。一番お安いコースでも、オリジナル懐紙と可愛らしいお菓子たちが付いてくる。このひと工夫で観劇前からかなりテンション上がる。

キャストは3人。それぞれZOOMの画面枠に入っている。俵和也さんの語りで大枠を固めながら、川口竜也さんと和田清香さんのミュージカル調の2人芝居が展開。俵さんが落語の世界観たっぷりな語り口で世界観に引き込んでくれるのが嬉しい。お菓子を一緒にいただきますしたり、お客さんからのチャットにリアクションしたり、オンラインならではのやり方で演劇のリアルタイム性を担保している。一方で、リモートではできないこともわきまえて奇を衒わないで地道に作り上げたのが伝わってくる作品。まさに「劇的茶屋」という名づけ通り、肩肘張らずふと立ち寄りたくなる「場所」のような。来月はまた新作があるとのことで、また寄ってみようかな。

hicopro「ツクリバナシ」

四コマ連載を休載中の漫画家の男性とその妻の話。創作に対する情熱と挫折が沸騰レベルの熱量と大仰さをもって描かれる。元の戯曲はままごとの柴さん。劇的茶屋も手掛ける永野拓也さんが、1組の夫婦を3組に増幅させてこれをミュージカル化。ミュージカルの作法をもって、四コマ漫画を描くという静かな行為と異様な熱量を見事に繋ぎ合わせていく。描きあげた四コマ最終回に夫婦が声かけするシーンがままごとらしくエモーショナルでグッときてしまった。ただの四コマ。でもそこには確かにキャラクターが息づいていて、彼らに順繰りに別れを告げていく。そして、また新たな創作の誕生を予感させるラスト。受容する側もそうですけど、創作側のこのイマジネーションもまた尊い

ヨーロッパ企画「京都妖気保安協会」@youtube

概要もさほど調べず何気なしに見てみたら、嵐電貸切車両からの1カメ演劇生配信というドエライ企画でした。ヨーロッパ企画らしい泣いて笑えるほっこりミニ作品で作品自体もよかったけど、もう電車っていうロケーション時点で優勝ですね。電車ならではのスリリングな演出もあり楽しい企画でした。

ハイバイ「て」

ひりひりするような家族劇。認知症のおばあさんがそれを傍観(者にされてしまった)している。実家を出た家族/残った家族がそれぞれがどんな思いで数年ぶりに一堂に介したか、同じくだりをそれぞれの視点から2回繰り返す、という仕掛け。これがめちゃくちゃ上手くできていて、2周目で話が全く違って見えてくる。再演があれば、ぜひ生で観たい。

 

千と千尋の神隠し

念願の初スクリーン鑑賞。映画館にとっては苦肉の策でしょうが、本当にありがたい機会でした。ディズニーで育ったクチなので、ジブリデビューが異様に遅かったのですが、ジブリ作品で最初にどハマりしてしまったのがこれでした。キテレツなくせに不思議と既視感のあるあちら側の世界と、名前と記憶と変身の話って、もう好きな要素しか詰め込まれてないですからね…。
スクリーンで観ると、1カット目からすごいーーという感情が爆発してしまい、泣くしかなかった。絵的にもストーリー的にも膨大なモチーフが複雑に絡んでいて、それを繋ぎ合わせる圧倒的なイマジネーション力には目をむくしかないし(きっと見れば見るほど発見があって、永遠に考察し続けられる)、社会人になってから改めて観ると、お仕事映画として腹落ちする部分もあってまた新鮮に受け止められるんですよね。というか、新入社員の頃を思い出して泣く(辛かった)。
そのせいもあってか、子供の頃は、あちら側の世界に憧れて、いつか自分の目の前にもそんな不思議なトンネルが現れれば…なんて思ってたけど、今ではあちら側の不可思議な世界を何故か見知っている気持ちで、何なら知らず知らずのうちに往来してる世界なのかも?という感覚にすらなってきました。初めての人たちとの新しい仕事にドキドキしてる時、その人たちと打ち解けられた時、見知らぬ土地に1人で行ってガイドブックにない何かを発見した時。そういう時にあの光景を見ている気がしたんですよね。
これからも大好きな映画であり続けるんだろうなぁと思う一方で、新海作品を観た時の強烈な新時代到来感のことも思い出しながら、一種のオールドファッションとして見てしまう自分もいた。周りには初見と思しき中高生が多く「意味わからんかったー!」と笑い合っていた。やはりいつの間にか時代が移り変わっているんだなー。

「透明人間」

toumei-ningen.jp

DV男と透明人間の恐怖(目には見えないけど執拗に気配だけは感じる)を上手く掛け合わせた映画。なんの変哲もない本来なら見過ごしてしまうであろう無人カットに、何かが潜んでいるかもしれない薄気味悪さと緊張感が漂う。オチも今的でした。

 

呪怨」@Netflix

www.netflix.com

楽しみにしていた配信。30分×回なので、比較的さっくり見れた。80〜90年代が時代背景になっていて、VHSで心霊番組を観るというエモいシーンから幕を開ける。一軒の呪われた家を発端に、複数の謎が紐づいていく「残穢」スタイルで、更には、女子高生コンクリ殺人事件、東電OL殺人事件のような誰もが知る事件のニュース映像が挟み込まれたり、事件があの家とリンクしていたのでは…?と示唆するような作りになっている。そういう点では好きなテイストではあったんですが、それよりも暴力、虐待、強姦、妊娠、胎児とか、特に女性にとってセンシティブな事柄への乱暴な「不幸のラベル化」(いつか流行ったケータイ小説的な)が気になりすぎて、引いた目で見てしまった。あと、せっかくこれだけ時代感を取り込んでいるのに、言葉とか役者から漂ってくる空気感がめっちゃ現代っていうのも乗り切れませんでした。

 

コリアタウン殺人事件」@prime video

 

POV方式のいわゆるモキュメンタリー。普通のサスペンス映画を念頭に入れてると、全く意味がわからなかったですね…。後から情報を仕入れると、実際にあった殺人事件(実際の事件関係者の写真を使用)で、インタビュー対象にもリアルな人たちが混じってて、なおかつ製作者不明を謳った映画らしい。それを前提にどこまで没入できるかという映画。そこに作品のミソが全部詰め込まれているわけですが、わたしはそれを知らないまま見たので、明確なストーリーがあるわけでもオチがあるわけでもなく、その上、事件の真相を追うカメラマンの思考回路が筋道が通っておらず、どんどん狂気じみて全くついていけないので、ただただ気持ち悪くこちらまで気が狂いそうになりました…。


「白ゆき姫殺人事件」@prime video、Netflix 

いわゆる「藪の中」タイプのミステリーで、他人の回想シーン以外は終盤までヒロインが登場しない。各人の主観的で都合のいいヒロイン像の断片が、SNSやワイドショーによって本人の知らぬ間に世間に垂れ流されていく。6年前の映画ですが、今の方がよりリアルに受け取れるかもしれない。それだけでもサスペンス・メディア映画として良くできているのですが、傷つきまくったヒロインにはちゃんとささやかな希望を残してくれていて(しかもその希望は旧メディアやオフラインのコミュニケーションと結びついている)、かなりの名作映画なのでは、と思っています。湊かなえさんの原作が既に面白いのかもしれないけど。

「見えない目撃者」@prime video

視覚障害を持ったヒロインが身の回りを知覚するときの過程が、「目の見えない人は世界をどうみているのか」を思い出して面白かった。後半、國村隼さんが警察官OB役で贅沢な出方をするシーンで一気に締まるんですけど、その後は意外と大味スプラッター

「十二人の死にたい子供たち」@prime video

冲方丁原作、倉持裕脚本。日テレはこういう系の本当に好きなんですね。うーん…これも「リモートで殺される」と印象が似てる。芝居が良くなかった。

恋は雨上がりのように」@prime video

子供の頃から歳上好きだったんですが、自分がおっさん側の年齢に近づくにつれて、おっさんと若い女子の関係性って女子がおっさんに良いように搾取されてるだけなのでは…という気持ち悪さが増して、むしろ拒否反応が出てきたんですよね。これも「おっさん×女子高生」というところで、またまたおっさんの願望が詰まったやつでしょ…と観るつもりはさらさらなかったんですが、訳あって視聴。残念なおっさん感がベースにありながらコメディにやたらキレのある大泉洋と超絶美少女だが何考えてるかわからないし絶対搾取されそうになくむしろ搾取する(「渇き。」がトラウマ)小松菜奈という絶妙なキャスティングで、気持ち悪さをギリギリ回避して、合法的に。むしろこの映画に詰まっているのは女性の願望なのかもしれない。搾取の心配のないいいおじさんとの温かな交流。こういうの、切実に欲しい。

日テレ「リモートで殺される」

「ダブルブッキング」に続く、日テレのリモートドラマ。原案は秋元康、脚本はAKB関係の作品を手掛けているらしい元麻布ファクトリー、監督 中田秀夫。「ダブルブッキング」が「search」だとしたらこちらは「アンフレンデッド」タイプ。元同級生たちとのリモート会議中、高校時代の友人の自殺を巡り殺人事件に巻き込まれていく。
薄々予感はしていたけど、最後は日テレ十八番のhulu誘導…。メディアミックスありきで作られたもんなんでしょうが、トリックの説明も何もないまま唐突に犯人だけ伝えられてもそれはサスペンスと呼べない、ただの駄作ですよね。サスペンスを抜きにしても台詞は間延び、ホラー演出も凡庸で、芝居の噛み合わせもまるで良くない。見所は前田あっちゃんの制服姿がいまだに猛烈に可愛かったことだけ。日テレリモートドラマというと、関東ローカル放送だった「ダブルブッキング」とどうしても比べてしまうわけで、あれもhuluへの誘導はあったけど本編でしっかり面白く完結させていたので、なんだかなーというもやもやで終わりました。

Inside Theater vol.1「シークレットカジノ」

画面・マイクミュートでもOKということで参加。当日メールが届いておらずあせったけど、事務局の方の迅速な対応で事なきを得ました(カジノという単語ではねられた可能性…)。前半は「Eschaton」のように複数あるZOOMの小部屋を自由に回遊する仕組み。会話やチャットだけでなく、アンケートやカジノなどで参加を促す仕掛けが盛り沢山で、わかりやすくルール化もされているのでとっつきやすい。後半は一転、一つの部屋に参加者が集約されて、各部屋で張っていた伏線を一気に回収していく。ここがSCRAPの腕の見せ所で、「のぞき見ZOOM」同様、”善意”が物語に参加する動機付けになっているのも印象的でした。

kotobanomado.hatenablog.com

最近この手のエンタメにハマっているので周りの人にも勧めがちなのだけれど、今更ながら、多少の気付きを得た。


Mystery fo You(サブスク謎)「七夕荘の隠しごと」

先月の3倍ボリューミーで満足度高い!紙だけでこんなに探索した気分になれるのか、と感動してしまった。在宅の日も少なくなってきたので今月をもって契約をいったんストップしたのですが、これがかなりボリューミーで面白かったので、若干後悔中。。というか、劇的茶屋もそうだったけど、家に中身の詳細がわからないものが届くってこと自体がわくわくしますね。

浦沢直樹PLUTO

鉄腕アトムの1エピソードから着想を得てここまで膨らませられるのかとただただ驚き。ゲジヒトを軸にしたハードボイルドサスペンスでありながら、生命倫理を掘り下げていく一大SF巨編。痺れました。(本当はもっと感想があったはずだけどメモっていなかった。。。)