やっと11月まできたぞー!!
- 宝塚宙組『アナスタシア』@宝塚大劇場
- 宝塚星組『エル・アルコン』『Ray』@梅田芸術劇場メインホール
- 舞台『おかしな二人』@シアター・ドラマシティ
- インサイドシアター『僕等のラストフェスティバル』
- 舞台『NINE』配信
- 映画『犬鳴村』@WOWOW
- 映画『屍人荘の殺人』@WOWOW
- 映画『メランコリック』@WOWOW
- 映画『キャッツ』
- 『忘れられた実験室からの脱出 リモートver.』
宝塚宙組『アナスタシア』@宝塚大劇場
ごくごくシンプルなストーリーなので、1幕ものとしては内容が薄すぎる…というのが一番の感想。キャラクターの魅力にも欠け、グランドミュージカルらしいシーンやナンバーも少ないので、思いのほか退屈してしまった。梅芸版を微妙な形でしか観ていないのでオリジナルがどうだったかはわかりませんが、御伽噺を御伽噺足らせる映像・セットや衣裳を売り文句にしていたので、それが一番の見どころだったはず。宝塚版も確かに煌びやかではあるものの、そもそも宝塚のデフォルトがキラキラなので、いつもとあまり変わり映えせず…。いつもより余計に盆を回してかなぁ…ぐらいの印象です。盆と一緒に背景の映像もぐるりと回転するシーンも何度かあるけど、それが効果的に見えるほどの美しい映像ではないし‥。
今回、悔しいことに(なんで)小池先生のスターを捌く巧みさがよくわかってしまった。『スカーレットピンパーネル』を思い返してみても、群衆の中のトップスター、2番手の際立たせ方、舞台上におけるキャラクター同士の関係性の見せ方が、明確に整理されているんですよね。例えば、おそらくグレヴはオリジナル版でも悪役になりきれない微妙なキャラクターだと思うんですけど、小池先生なら嘘でも美味しい役風に仕立てただろうなという気がする。ある意味宝塚らしくはあるけど、残念ながら、無難で印象に残らない演出だった。
全体的に歌の不味い人がおらず、まかぜさんもしっかり歌えていたし、何より星風さんの歌が力強くなっていた。ただ、ビジュアルの圧倒的プリンセス感とは裏腹に、後半まで気品に欠け(演出的にも、記憶を取り戻すシーンはもっと彼女にクローズアップしていい気がします)、疑い深いわたしは彼女が本物のアナスタシアだったのか今でも疑心暗鬼。キキは悪役になりきれない無駄に難しい役柄で、ちょっとまだ掴めてない気がしました。歌はさすがに聞かせる。桜木さんはいわゆる路線の役どころではないけど、とても頑張っていた。期待していた和希さんの女役はちょっと女を意識しすぎな気がしました。
単体で見ると、わたしにとっては心動かされる作品ではなかったのですが、『神々の土地』目線で観るとまた話は違ってきて。作品のカラーはまるで違うけど、すっしーさんが同じマリア皇太后役をやっていたり、星風さんも姉妹の役を演じていたりで、世界線が繋がる。数年越しに、ほろ苦い『神々の土地』の世界にひとさじの甘いifが加わったようで、感慨深かったです。
宝塚星組『エル・アルコン』『Ray』@梅田芸術劇場メインホール
13年ぶりの再演らしい(遠い目)。一番の見どころだったオープニングは全ツ仕様のセリなしバージョンでがっがりしたけど、相変わらず、みっしょーんは連呼していた。他はすっかり忘れていて、でも、この役、めちゃくちゃ稀鳥まりやっぽいなーと観ていたら本当にそうだった。
礼さんは、トップの役柄としては珍しいアンチヒーローを濃ゆく作り込んでいて、宝塚を観た満足感を感じさせてくれる。しかもそれが礼さん独自の男役像でありながら、その端々から初演の安蘭さんだけでなく、柚希さん、紅さんまでの星組歴代トップの香りが漂い、星組の系譜を感じさせてくれるのも面白かった。逆に、舞空さんはいっぱいいっぱいな感じで、初演の芝居を完コピ。ただ、歌まではコピーできず、あすかちゃんがいかに歌いこなしていたかが今更ながらよくわかった。
『Ray』は終演後、既に緞帳もおりた中での謎の「レーイー」タイムが面白すぎて静かに天を仰ぎました…。
舞台『おかしな二人』@シアター・ドラマシティ
大地真央様と花總まり様という東宝ミュージカル新旧二大看板の初共演によるニール・サイモンの『おかしな二人』女性版。演出は原田諒先生。音楽、装置、衣裳は原田先生といつもタッグを組んでいるスタッフが揃っている。ニール・サイモンの小洒落たコメディのはずが、大地さんの座長公演的な雰囲気と原田先生のベタ志向の合わせ技なのか、黒柳徹子コメディシリーズなんかよりもずっと関西風の泥臭さを感じた。
大地さんが持ち前のコメディセンスで場を引っ張り、そこに花總さんがこれまで見た事のない壮絶な顔と声で食らい付いていく。花總さんの暗くて湿っぽい持ち味が今回の役にはぴったりよハマっているのもよかった。二人の友人役には、シルビア・グラブさん、平田敦子さん、宮地雅子さん、南キャンしずちゃん。確かにそれぞれコメディセンスのある人たちではあるけど、なかなかに不思議なキャスティングで、狙った以上のチグハグ感がある。友人たちは、1・2幕を通して目まぐるしく関係性を変え、お互いの人生への向き合い方も変わったオリーブ(大地さん)とフローレンス(花總さん)とは違って、ごくわずな出番の中で、惰性でカードゲームに耽っていた冒頭から、ちょっとした変化を迎える。ただ、そんな中でも唯一何も変わらないのがしずちゃんの役で、だからこそ彼女の周回遅れのテンポ感なのかな…とは思った。
芋洗坂係長と渡辺大輔さんは底抜けに明るいスペイン人ブラザーズ役。2幕のみの出演ながら、息ぴったりで笑いの着火剤になっていた。
想像よりほろ苦い結末で、なるほど三谷幸喜は笑いだけじゃなくてこういうところもニール・サイモンをリスペクトしているんだなぁ‥と今更ながら学んだのですが、その余韻を感じる暇もなく宝塚的なフィナーレに突入するのは、この二大看板(とそれに付随するファン)ならではでしょうか。
舞台は70年台の設定?で、上演前までは当時の洋楽がずっと掛かっていて(衣裳も色とりどりのヒッピー風)、劇中はよくわからないダサいBGM、フィナーレはジャズやミュージカル曲ということで、音楽的な世界観がまちまち過ぎてしっくりこず。しかも、権利上の問題もあるのか、フィナーレはメドレーにもならないフレーズごとの継ぎ接ぎで、まったく乗れない。大地真央様は登場しただけでスターオーラ抜群、ジャズを歌っても粋で、いいもん見たー!という気にはなれるのですが。
インサイドシアター『僕等のラストフェスティバル』
『シークレットカジノ』に続くインサイドシアター第二弾。コロナの影響を受けてオンライン開催になってしまった高校の文化祭という舞台設定。前回よりもオンライン参加型演劇としての必然性が担保されていて、入りやすい間口になっていた。参加者は、メイド喫茶やクイズ大会のような文化祭の出し物にZOOMから自由に参加できる。そして、そこで散りばめられた伏線は、お客さんを一つの部屋に集約した後半部分で一気に回収していく。この仕組みは前回通りでした。
今回気になったのは、一つのZOOM画面から複数人が喋ったり歌うシーンが多くて音声に聞きづらい部分が多かったことだったり、高校生役ということで若いキャストが多く、演技力やこういう形式ならではのアドリブ力などのテクニカル面。あと、後半のストーリーが圧倒的に弱い…でも「エモさ」的にはこれでいいのか。
ノーミーツといい、青春ものってオンラインコンテンツとして、作りやすい/受容されやすい(青春にもう一度浸りたいと思う人が多い)んでしょうか。個人的には、『わたしの星』が最強青春コンテンツ(ただし、エモさに浸っていると最後にしっぺ返しをくらう)だと思っているので、こういう系が好きな方は是非観て欲しい。
舞台『NINE』配信
映画版は観たことがあったけど、舞台版は初見。
ライブ配信終了。映画ってこんな話でしたっけ😂?ミュージカル界のモラトリアムキングが「ピピン」「ファントム」に続き、しっかりモラトリアムしてました。https://t.co/cNvmBYJOFm
— たちばな (@daranomado) 2020年11月22日
グイドの人生を彩る8人の女性たち(愛欲のみならずあらゆる欲望の象徴)に相対して黒衣に徹するDAZZLE9人。コンセプトはわかるけど、某マサラミュージカルの梅棒を思い出しましたね…🙄ライブ配信は明日も!
— たちばな (@daranomado) 2020年11月22日
映画『犬鳴村』@WOWOW
インターネット発の都市伝説の映画化。
付け火の村やおじろくおばさ、エンバーマーの方のnoteだったり、横溝正史だったり…かつて本当にあったかもしれないし(なかったかもしれない)、いまだに地方に残っているかもしれない地方・共同体の恐ろしさが描かれる因習ホラーとして期待していたのですが、まったくの肩透かし。即席的に脅かしてくる見慣れたオバケと突如犬と化す高島礼子が入り乱れてました…怖さを整理してくれー。
最近、Jホラーは全盛期だった90年代からアップデートできていないのではと思っている。ホラーは時代を写す鏡(社会批評)だと思っていて、90年代のホラーの名作「リング」「女幽霊」「CURE」「回路」なんかは事実そうだったと思うのですが。アリ・アスター(「ミッドサマー」はまさに因習ホラー)やジョーダン・ピールがホラーの定石を踏みながら時代に即した良作を作ってるのを考えると、否が応でも日本の時代遅れ感を感じてしまう。
唯一、因習ホラーめくのがかつての犬鳴村とそれを破壊した国家権力の横暴を写したフィルムを見るシーン。ただ、ここも『スパイの妻』のフィルムの方がずっと上手ですね。現実世界とかけ離れた世界観を一から作り出すには、センスやお金、役者・スタッフのスキルと膨大な力の掛け合わせが必要なわけで、それがないからフィルムという形に詰め込まれているのだろうけど、それでもちゃちに見えるとなると、もう見所が高島礼子の犬しかない(確かに怖いけど)。村シリーズはまだ続くようだけど、期待値が下がってしまいました。
映画『屍人荘の殺人』@WOWOW
何度か予告編は観ていたのですが、普通のミステリーコメディだと思っていたので、斬新なジャンルの掛け合わせ方と中村倫也氏の扱いにびっくり。ただし、それが面白いかというとまた別問題で‥。いつもの神木くんキャラ(学生役がいまだに似合う)に、中村倫也さんと浜辺美波さんの振り切った漫画的キャラ作りとギャグが見どころで、そのノリとテンポについていけると面白いのかもしれません。(わたしは笑えなかった)
映画『メランコリック』@WOWOW
東大卒の男性が主人公。殺しの裏稼業に手を染めることで、初めて人生が輝きだす。両親のふわふわ宙に浮いたような会話が面白かった。
映画『キャッツ』
予告編だけでもキツかったのに、怖いもの見たさで観てしまった…。シーンの羅列に近い舞台版から、ヒロイン ヴィクトリアに各猫を紹介していくという形で流れを作ったり、マキャヴィティをわかりやすい悪役に作り替えていたり工夫はされていた。
ただもうストーリー以前にキモくて品もなくて、ジェニエニドッツのシーンなんてもはや悪趣味すぎるクソコラかと…。何がしたかったんや…(というかそもそもなぜこれを実写化しようと…?)。ジェームズ・コーデンとレベル・ウィルソンがはなからネタ的にやっていたのも好きになれませんでした。しかし、イアン・マッケランくらいになってくると猫の姿も違和感なく、こういう猫いるな…ぐらいの感覚になるので凄いし、これだけ酷い映画でも、ガスの歌(ジェリーロラムのパートも全てガスが歌っている)には泣いてしまうから悔しい。
『忘れられた実験室からの脱出 リモートver.』
終業後に同僚たち5人と参加。リアル脱出ゲーム経験者が一人しかいなくてあまりに謎が解けなさすぎるため、見かねたキャストのお兄さんがヒントを連発して積極的に誘導していくというゲーム展開に。それでも私たちの謎ときがあまりに遅く、とある謎がクリアするまでずっと無言のまま動けないアンドロイド役のお姉さんをずーっとお待たせし続けて、本番時間が短かったの、本当に申し訳なかったです‥。(いわずもがな脱出できませんでした)