その1・2はこちら。
【3日目】
屋島
ホテルをチェックアウトして向かったのは、ふたたびの屋島。瀬戸芸公式ガイドブックで四国村の存在を知り、行ってみたくなってしまったから。
ホテルを出る時間を間違えて電車に乗り遅れそうになったけど、なんせホテルから駅が近く、駅の1階部分にホームが並んでるので、走り込んだら間に合った。高松〜屋島間、意外と本数少なくて1本逃すと大変なんですよね。
走り抜けながら撮影した高松駅。
屋島からはシャトルバスで四国村まで。前日に行った山上とは違って、徒歩でも行けなくはない距離感だった。真新しい立派な四国村エントランスと、その前にはうどん屋わら家が。
せっかく高松に来たんだからお店でもうどんが食べたいな、でも予定パツパツだしな…と前日夜に半ばあきらめながら食べログを調べてたら、なんと四国村の目の前に美味しいうどん屋があることがわかり、朝うどんを決めた。
古民家風の広いお店で、まだ開店まもないにもかかわらず、それなりに人がいる。シンプルな生醤油うどんをオーダー。薬味はセルフトッピングなので、シンプルなうどんだけがやってくる。
しょうゆを一回し、薬味をのせて食べると…美味しい。うどんの風味が感じられるので、醤油をほんの少しだけでも十分満足でした。来てよかったー。
いざ四国村へ。美しいエントランスをくぐると、広大な自然の中、山の斜面を活かして、いろんな建物が点在している。
小豆島から移築してきた、農村歌舞伎の舞台。前から興味を持っていて、一度見てみたかったんだけど、まさかここで見られるとは。舞台下には人力で廻す盆の機構も見える。
高知のかずら橋は実際の2/3スケールらしい。真上から見ると、思った以上に木が細く間も空いていて、「ゴジラvsモスラ」の冒頭シーン(橋が切れる)を思い出して、身構えた。
なんとか橋を渡ってずんずん登っていくと、古民家が立ち並んでいて、タイムスリップしたような感覚に。人影もまばらで、静かな空間が広がっている。
お遍路さんの休み処にもなったお堂。
砂糖しめ小屋。
— たちばな (@daranomado) 2022年11月22日
四国村の名の通り、四国中から取り壊されそうな建物を集めてきて、修理保存したものを惜しげもなく見せてくれる。カトーレックの創業者 加藤達雄さんの取組みから始まったらしい(わら家も加藤さんが開業)。素晴らしいね。広島の神勝寺もこういう取り組みを意識したものだったんだろうか。
そんな中に、ひっそりと瀬戸芸の作品が隠れている。本山ひろ子さんの、あたかも本当にいるかのような神様たち。”いわれ”と共に配置されているのだけど、最近、この”いわれ”が無くなってしまった(誰も覚えてないし記録も残ってない)神様は何者になるのか、ということに思いを馳せてしまう。
砂糖しめ小屋の中には、ラム・カツィールの作品も。
更に上の方までずんずん進んでいくと、いきなりの安藤忠雄で時空が歪む。安藤忠雄建築ってあらゆる場所にはびこってるよね(言い方)。
帰りは、エントランス隣の神戸異人館を活用したカフェでメロンソーダを一気飲みして、タクシーで下山。
高松へ。名残惜しいけど、これでわたしの瀬戸芸は終了。マリンライナーで岡山へ。
岡山芸術交流
3年前に何気なく行ってみたら楽しすぎた岡山芸術交流。2019年はTrans-KOBEもあったりして、今思えば、積極的に旅に出るようになった契機になった年だった。
プロデューサーのハラスメント問題なども耳に入ってきたけど、あまりに楽しすぎた記憶があるのでどうしても行きたくなってしまって、小豆島より優先させて来た。
いざ岡山につくと、街をあげて、のイメージがあった3年前に比べて、駅のラッピングも駅前のインフォメーションセンターもなく、寂しい感じ。情報があまりにもないので、初めての人なら、ちょっと戸惑うだろうなと思った。今回の会場は10会場。半日くらいで回れるいいサイズ感の芸術祭。
3年前の記憶を頼りに、路面電車と徒歩で拠点となる小学校へ。意外と道は覚えているもので、途中の地下神殿みたいな通路も懐かしく、これこれ〜となった。
A旧内山下小学校。ここで事前予約していたチケットを引き換える。
前回、ティノ・セーガルのパフォーマンスをやっていた校庭には芝生が生え、今回のテーマである、”Do We Dream under the Same Sky ”の文字が刻まれていた。そのそばには、今回のアートディレクター リクリット・ティラヴァーニャが地元の飲食店とコラボしたキッチンカーが出ていてめちゃくちゃ美味しそうだったんだけど、おしりの時間があるので泣く泣く断念。
校舎の中。片山真理さん。
ダニエル・ボイド。
教室の中で衣服の中に空気を通してまるで人のようになったマネキンを熱感知カメラで捉える、アジフ・ミアンの作品。
ややグロテスクなバルバラ・サンチェス・カネの、皮を使った作品。
島袋道浩さんの映像作品「わけのわからないものをどうやってひきうけるか」は、日本語を知らないドイツ人の女性に日本語の歌を覚えて歌ってもらうというもの。アーテイスト側にその意思はないのかもしれないけど、他作品との響き合いもあって、植民地主義的に見え、どうもグロテスクで居心地が悪い。
プールにはクマ。プレシャス・オコヨモン。
体育館には、曽根裕さんの大きな滑り台(実際に遊べる)が鎮座。
その奥側はなんとライブ会場(ティラヴァーニャのOil drum stage)になっていて、地元のバンドマンたちが盛り上がっていた。
壁には、再びダニエル・ボイド。体育館の壁面のドットと呼応しているように馴染んでいるのが面白い。奥にも作品があったのだけれど、ライブを横切っていくのも忍びなかったので行くのはやめておいた。
駅で感じた予感は的中。前回の方が大掛かりなインスタレーションが多く、あまりパワーが感じられない。
B天神山文化プラザ。3年前のここの展示に度肝を抜かれたので期待していたんだけど…ここも規模が縮小されていた。そもそも、芸術祭での施設利用にあたって、プロデューサーのハラスメント問題とともに、市民からの陳情書が上がっていたんだよね。その影響もあってか、市民の文化活動(書道)とコラボするような作品に大きくスペースが割かれていた(全くピンとこなかったけど)。
デヴィッド・メダラのあわあわ作品。
前回衝撃的だった1階部分の空間は、参加アーティストのインデックス展になっていた。うーん…理論上やりたいことはわかるけど、この手の芸術祭で普通の美術館的なものは求めていない。。
存在自体が面白い、Cオリエント美術館。通常の展示を行いつつ、ところどころに芸術祭の作品が。インデックス展にもあったラゼル・アハメッドの「誰がタニヤを殺したか」は、アルカイダにより殺害されたドラァグクイーンの映像から着想を得た作品。ずしりときた。
フリーダ・オルパボのコラージュ作品は、かつての万博で"展示"されていた「ホッテントット」を思い出した。オリエント美術館という歴史を司る空間の中で、公に触れられてこなかった都合の悪い歴史をまざまざと突き付けられたような感覚。
運よくパフォーマンス時間に当たったらしく、吹き抜けに出てきた。神楽鈴のようなヤン・ヘギュのSonic Cosmic Rope。鈴の音が駆けあがってくる。
— たちばな (@daranomado) 2022年11月22日
G岡山神社は初めて来たかもしれない。
先ほどのヤン・ヘギュの切り絵作品があった。さっきの鈴も含め、ちょっと宗教性があるというか、神々しさを感じる。
アブラハム・クルズヴィエイガス。リボンを垂らしただけで、一気に現実離れした光景に変わる。
すぐ近くのH石山公園にもヤン・ヘギュ。
E林原美術館も、芸術祭に占有されることに抗議活動があったとか。こちらもやはりスペース縮小(というか庭に追いやられていた)。なんか悲しい。おまけに、アート・レーバーとジャライ族のアーティストたちによるサウンドインスタレーション作品が、故障中で音鳴らず…。
館内の休憩スペースで細々と流れているワン・ビンの映像作品は、自給自足で荒々しい大地の中で生きる男性の暮らしが描かれている。これも片隅に追いやられているんだけど、目を引き付ける強力な画力があった。
最後に、I岡山城(中の段)。ここは池田亮司さんの作品。HPを見ると16時~となっていたので、最後に回ることにした。この前、アート好きの美容院のお姉さんとこの芸術祭について喋ってたら、お姉さんは芸術祭の公式マップを見て岡山城にきて、時間外でびっくりしたと。確かにマップには16時~の記載がなくて(詳細はHPへの注釈はあるけど)、結構重要な情報なのに、不親切だなーと思った。
れんが倉庫での映像も素晴らしかったけど、こちらも大迫力。夜見ると、より没入感あるんだろうな。
— たちばな (@daranomado) 2022年11月22日
Dシネマ・クレール丸の内、F後楽園、J岡山天満屋を残して、わたしの岡山芸術交流は終了。
「僕らは同じ空のもと夢をみているのだろうか」というテーマ通り(ハラスメント問題があったので、このテーマにもツッコミが入っていたが)、アーティストの人選は前回よりもずっと多様で、興味深い作品もあった。ただ、全体を通してみると、ちょっと物足りない感じ。
あと、体育館のバンドや天神山文化プラザの書道は、抗議活動を受けて市民に主体的に参加してもらうための手段だったのかもしれないけど、外から来た人間から見ると、あまり魅力的に映らなかった。せっかく文化施設が多く素敵な街なのに、地元の人たちに歓迎されず、スケールダウンさせながらだましだまし芸術祭を続行するのは不幸でしかない。もし3年後にまた開催するなら、実施体制を根本から見直してほしいと切に思った。
ちなみに、前回印象的だったのに今回は会場に入っていなかった旧福岡醤油建物は正式にギャラリーになったらしい。年内はチームラボ展らしく、せっかくなら回ればよかった、とちょっと後悔。
岡山駅&帰り
帰りの新幹線で食べられるようなものを物色。珍しいさわら丼があったので、買ってみた。あとから調べてみると、どうやら岡山の名物らしい。いい具合に油がのっている鰆とたっぷりの薬味で、なんて美味しい!これは選んで大正解だった。
ドリンクは、わらびもち入り。タピオカより断然こっち派。ところが、わらびもち入りドリンクを飲むと必ずこぼすという呪いがかかっているらしく(小倉で買ったときには新幹線で全部ぶちまけて、見知らぬ親切なマダムとわらびもちを拾い集めるという地獄イベントが発生した)、また駅でこぼした。。。
あとは、お土産に、広東菜館山珍の豚まんと構内にあった棒天を購入。
豚まんは、正直、食べなれてる551の方が好きだな~と思ってしまったんだけど、構内の小さな売店にひっそり売ってて、あまり期待せずに買った棒天がやたら美味しくて!明太子とかたこねぎのような個性的なメニュー展開で、ごろごろ具沢山で味も濃いめで、軽く炙って食べるとめちゃ美味しい。岡山にきたら、鰆丼と棒天は絶対食べようと心に誓った。
まとめ
念願の豊島に行けて本当に幸せだった。あまりに楽しかったので、帰宅してから、他の島にもなんとか行けないか模索したけど、休み取れない期間とかぶってしまって泣く泣く断念。。直島に行った過去2回は家族、友達との旅だったので、一人で身軽かつストイックに楽しむのに適した旅先だとも感じた。次回もしチャンスがあるならば、何回かに分けてめいっぱい楽しもうと思う。3日目に関しては、岡山芸術交流が不完全燃焼気味で、岡山じゃなくて小豆島に行ってたら…という思いも感じてしまった。とはいえ、トータルで見るとめちゃくちゃ楽しい旅だった!