だらだらノマド。

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新潟 大地の芸術祭旅 その3(十日町)

大地の芸術祭旅 その3。

その1・2はこちら。

kotobanomado.hatenablog.com

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【3日目】

朝風呂+朝食

早起きして、大浴場いろはの湯へ。早めだから人少なめかと思いきや結構人多めだった。でも、露天風呂が大きくて、密になることなく満喫できた。

身支度して朝ごはん。昨日と同じ個室のお食事どころへ。やはり味噌とキノコ推しだったんだけど、この味噌バターのキノコ陶板焼きがはちゃめちゃに美味しく、ご飯が進んだ。

帰りも駅まで送ってもらった。お世話になりました!

越後湯沢のコインロッカーに荷物を預け、今日もまた上越線ほくほく線を使い、十日町へ。

セレクトバスツアーAコース

十日町の駅もかなりしっかりしてた。

案内所でバスツアーの受付を済ませ、バスに乗り込む。ところで、この日、全身真っ赤のコロボックルみたいなおじさんが同じバスに乗ってて、私の写真の端々に写り込んでいる(もはや妖精写真)。なるべく写ってないものを出してはいるつもりなんだけど、写ってても気にしないでください。

この日は普通の大型の観光バスで、運転手さんもしっかりアナウンスしてくれた。まずは畑と住宅の狭間にある田中文夫文庫へ。

そもそも田中文男とは…?というところからのスタートだったんだけど、どうやら建築の研究や建物の修復保存にも精通していた大工棟梁さんらしい。古い公民館が会場になっていて、1階にはジャンル横断的に彼が収集した本がたくさん。その中に、鮮やかに光る本がディスプレイされている。

2階は前日に観た農舞台の教室と同じ、河口さんの新作「農具の時間」が。一面真っ黄色の中に農具が実際に使う時のポジションのまま浮遊している。

瀬戸芸は漁業がモチーフになってる作品ってあまりないイメージなのだけど(島によって実はあってわたしが知らないだけかも)、大地の芸術祭は、大地というだけあって、農業と強く結びつき、しかもそれが労働というより住民の暮らしや身体性の一部として作品化されているものが多い気がした。
ここの受付を担当しているおじさんがとても気さくな良い方で、作品やそれぞれの農具の説明をしてくれたり、農具を持って実際にポージングしてくれたりして、良い時間を過ごすことができた。時期的なものもあったのかもしれないけど、瀬戸芸に比べ、芸術祭のスタッフに若い人たちが少ない代わりに年配の男性が多く、前日の「最後の教室」なんかは、本当に嫌々やってるんだろうなというおじさんたちだったので‥。こういうちょっとした出会いも体験に大きく影響するよね、と思った。
次に、十日町市利雪親雪総合センターへ。ここは元々温泉施設だったらしい。

新作の「誤山を眺める」はちょっとよくわからない作品だったけど、あちこちでヘッドフォンをつけて映像を観たり、何だか緩い雰囲気が漂っていた。

2階には、井橋亜璃紗さんの色鮮やかなテキスタイル作品が。

お次は、このAコース参加のきっかけになったタレルの「光の館」。宿泊施設にもなっているけど、さすがに泊まる勇気はなく‥。

神殿のような建物を入ると、和室の天井にあのタレルの部屋の◇があって、屋根の裏側が見えている。

すると、スタッフさんが屋根を開閉してくれるイベントが発生。ゆっくりスライドして徐々に空が見える(後で外から見ると、本当に単純に屋根が左右にスライドしてた)。思わず、うわぁ‥!と声が出てしまった。

この日は降水確率100%だったけど、何とかお天気が持ちこたえ、このスライド儀式を体験することができて、小躍りするくらい嬉しかった。ちなみに、こういう真っ白な空が一番部屋の中が明るく見えて、夜は照明によってさらに不思議な体験ができるんだとか。

1階に降りて行くと、廊下部分にも間接照明が仕込まれている。外の紅葉とも相まって、なんだか幻想的。

そして、お風呂が。日中は風情ある感じだけど、夜になると真っ暗な中、浴槽にあるLEDだけが光って、体が発光しているように見えるらしい。

次は、ラストの「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」。かなり山深い中にある廃校を利用している。

廃校というとセンチメンタルになってしまいがちで、この芸術祭でも廃校を舞台にした作品はどうしてもそういう系統のものが多い中で、ここは一線を画していた。

確かに、最後に黒板にみんなで描いたメッセージや絵がそのままになっていたりして、グッと来る場所もあるんだけど、田島さんが最後に在籍していた学生さんたちと一緒に作った作品はどれもパワフル。生徒さんの化身と思しきカラフルなキャラクターが教室に座っていたり、不思議な生き物が機械仕掛けで動いていたり、それぞれの部屋には留まらない賑やかさで、時には、建物の壁をぶち破ってこの建物と一体化するくらいの生命力で「今も生きている」ことを感じさせてくれる。この思い出があるから、ちょっと辛くても頑張っていける、って思えることが人生において人それぞれにいくつかあると思うけど、生徒さんたちにとってその一つがここじゃないかな、と勝手ながら思った。

可愛らしいカフェも。

外にはビオトープが広がっていて、ヤギがめっちゃ野菜食べてた。

ノーマークでツアーに組み込まれてなかったら絶対に来てなかった場所だろうから、いいご縁を感じた。

ここから十日町駅に戻って解散、となるはずが、バスの事業所がMoneTの近くだからということで、運転手さんのご厚意で希望者は事務所まで乗っけてくれた。MoneTって駅から意外と遠くて、まつだい駅と農舞台くらいの距離感で思い込んでいたら、徒歩10分掛かるんですよね。次の予定上、1時間ちょいしか時間がない中MoneTを回らないと行けなかったので、時間短縮になってめちゃくちゃ助かった。この日の運転手さんは滞在時間を5分延ばしてくれたり、お手洗いに行きたい人がいたら途中で寄ってくれたりとめちゃくちゃ良い運転手さんで、元々前日の予定表よりゆったり組まれていたということもあるけど、バタバタ感なく観て回ることができて、本当にありがたかった。

MoneT

とうとう降り出した雨の中、MoneTへ。

想像以上に広くてビビる。でも美しい。夏にはこの中心で中谷芙二子さんの霧神楽が見られたらしく、うー…それも観てみたかった。

主にこの2階部分が展示スペースになっていて、ちょっと急ぎめに観て回る。↑の水の中にある写真、なんかよくわからなかったなーと思っていると、2階の特定位置からだけ、水面にリフレクションしたかのように見えるレアンドロ・エルリッヒの作品だった(若干撮る位置ずれてるけど)。小雨が降っていてもリフレクションの世界はご機嫌な青空でちょっと気分が晴れる。

青森でも見た、目[mé]のmovements。

ニコラ・ダロの「エアリアル」は「テンペスト」からモチーフを取っているらしいけど、お化けのようでもあり、神楽のようでもあり、何だか可愛いキャラクター的でもあり。ガラス越し見ても懸命に踊っているように見えて愛おしくなってしまった。

名和晃平さんのForce。一見固体の作品に見えるけど、実はシリコンオイルがずーっと流れ続けていて、肉眼で見ると何とも言えないどろっとした質感が伝わってくる。

カバコフの作品がここにも。ソ連時代の市井の人たちの何気ない言葉とモノたち。

順調に巡っていると、いきなり行列が現れた。クワクボリョウタさんの「LOST#6」。中学生によって故意に破壊された後復活したことで話題になった作品で、その事件まではどうやって展示されていたかは知らないけど、どうやら管理体制が強化されたらしく、8名1組の入替制になっていた。見終わったら速攻駅に向かわなければならない時間になってしまうキワキワのタイミングで何とか滑り込み。

ライトをつけた電車模型が織物道具の合間を走り抜けていく作品。光が道具に当たる度に、四方の壁に影が投げかけられる。めちゃくちゃ静かで繊細な作品で、結果的に少人数で動かず最後まで見れてよかった。

TSUMARIバーガーもケーキも食べたかったし、何なら館内にある温泉にも入りたかったし、隣にある道の駅クロステンにも行きたかったけど、タイムアップ。ここは本来3時間コースだなと思った。早歩きで10分ちょいかかって駅到着。

JIKU

十日町〜六日町間の列車作品「JIKU」をかなり前にWEB予約していた。

hokuhoku.co.jp

駅でチケットをもらい、乗車。(ここもコロボックルおじさんと一緒だった)

今回乗りまくったほくほく線は、大地の芸術祭のメイン会場になってる十日町やまつだいを結ぶ、97年に開通した比較的新しい路線。乗っててかなりトンネルが多いなとは思ってたんだけど、美佐島駅に至ってはトンネルの中にあるらしい。その駅で途中下車して体験できる、ライゾマティクスから派生したパノラマティクスによる光と音のインスタレーション作品。駅に到着するまでにも、トンネルの中を走行中には車内の電気が消され、ほくほく線が開通して生活がどう変わったか、地元の人たちへのインタビュー音声が流れている。確かに、前日には学生さんがたくさん乗っていたし近隣地区同士の繋がりも、東京とか大都市に移動する手段としても、この線があるのとないのではかなり違うよね。
いざ駅に着くとセッティングの後、始まる。

トンネルの向こうの方まで真っ直ぐ伸びる光とそれに呼応する音。終わった後も撮影用にしばらく照明を点けたままにしてくれていた。本当にトンネルってまっすぐなんだなぁ。生活手段の一つでありながら、こうしてみると幻想的でもある。

この電車は六日町まで。帰りは飛行機だとうまく時間が合わなかったので、新幹線で。事前に六日町〜新大阪までの乗車券を買っていたんだけど、そういや越後湯沢の改札外コインロッカーに荷物入れたな…と気づき、切符の「途中下車NG」的な記載にビビりちらしながら越後湯沢に到着すると、普通に外出て良かった。(ちなみに、ほくほく線、いつも乗車時に切符チェックされないし、下車時も超適当だったけど、あれで良かったんだろうか…青森に引き続き、ワンマン車のお作法がわからない)。

越後湯沢での乗り継ぎ時間が限られてるため、残りのクーポンを使ってさっさと駅弁を買おうとしたら、駅弁が1種類しかなかった…こんなに土産物で溢れた駅で駅弁がないというまさかの落とし穴。仕方ないので、差し迫った時間の中、ちょっと気になっていた屋台っぽいお店で「五平餅、すぐできますか?!」と確認して「秒でできます!」と本当に秒で作ってもらった五平餅だけ握りしめて東京行きのたにがわへ乗車。お腹空いてたので乗車して3分で平らげた。香ばしくて美味しい!これは買って正解だった。

というわけで、たにがわで東京へ向かい、東京駅で出張と全く同じように何の変哲もない駅弁を買い、のぞみの中で食べて帰ってきた。

まとめ

大地の芸術祭2泊3日の旅、楽しかった!瀬戸芸とセットで行けたので、なおさら感慨深い(雨降りがちな私の旅において、瀬戸芸・大地の芸術祭と続けてお天気に恵まれたのも奇跡に近い)。特に、豊島で印象的だったボルタンスキーの「最後の教室」に行けたのは最高の経験になったし、強烈な松之山温泉にも入れて新潟の食も堪能できて満足。

ただ一方で、この芸術祭の回り方、めっちゃ難しいやん、と。瀬戸芸は何やかんや言いつつ、島だしバスもあるので計画さえすれば回りきれるけど、こちらはもっと広範囲に広がっていて、車でしか行けない場所がほとんどなので、思うように回れないフラストレーションみたいなものは溜まってしまう。(あと、小学校や公民館を再利用した会場が多かったけど、作品と場の関係性としてさほど効果的でないのも多々あって、アートを体感する場としては瀬戸芸の方が好きだと感じた。)

その点、今回参加したセレクトバスツアーは(ちょっと思うところもあったけど)有り難かったし、多分これがなかったら、大地の芸術祭に参加する踏ん切りつかなかったんじゃないかな。滞在時間のバランスはちょっと残念なところもあったけど、交通に関してはかなり調べてから行ったので、失敗らしい失敗はなかったし、良い感じに回れたと思う!(一人旅スキルだけが順調に磨かれている)。回れなかった作品やMoneTのリベンジは3年後行ければいいな…行けるかな…(遠い目)