だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

12月東京遠征『東京ローズ』『ANIMA』『ハリー・ポッターと呪いの子』

12月東京遠征の簡単なメモ。

 

東京ローズ』@新国立劇場小劇場

元々興味があった東京ローズ

okakuro.org

Mateの娘さんがこの作品に出てる?みたいなツイートを発見して、へーそんなミュージカルあるんだと思ってたら、あれよあれよという間に日本上陸。しかも新国立劇場の製作、藤田俊太郎氏の演出、キャストはフルオーディションという試みにも惹かれ、情報解禁時から楽しみにしていた。

女性キャスト6名(飯野めぐみさん、シルビア・グラブさん、鈴木瑛美子さん、原田真絢さん、森加織さん、山本咲希さん)にミュージシャン4名と簡素なセット。東京ローズとして国家反逆罪の罪に問われ、裁判にかけられるアイバのシーンから幕が開ける。

ポップでライトな今風のミュージカル楽曲(ウィリアム・パトリック・ハリソン)(実際最近作られたもの)。さすがフルオーディションを勝ち抜いた実力派たちだけあって、それぞれの歌唱力は高く、ハーモニーも美しい。

けど、なんかこれ、たいしたこと歌ってなくないか…?という疑念が頭をもたげ始めて…。裁判からアイバの半生を振り返る回想劇の形をとっているのだけど、弁護士が狂言回しの役割を兼ねているのも特段効果的に感じず、かといってアイバの人物像を掘り下げてるわけでもなく(やっぱりたいしたこと言ってない…)、遂にラジオDJになってからも、見せどころのないまま、教科書的に淡々と説明していく感じ。最終的には日米で揺れるアイデンティティと自らの人権のためにもがく女性の話になっていく…が、ここまできてもやっぱり、戦う!権利!と連呼するだけでドラマが浮かび上がるわけではない。

全キャスト6名で複数役を演じながらリレー方式でアイバを演じ繋いでいくいかにも小劇場っぽい演出もさほど活きているとは思えなかった。もう少し疾走感があっても良かったのでは(それこそ『千年女優』のように)。音楽のノリの良さと小劇場感、セットや演出の生真面目さ、脚本の拙さ…。全部がてんでばらばらで空中分解してしまっているような印象でした。

キャストでは、鈴木瑛美子さんが印象に残った(男役やってる時、望海さんみあった)。

daisydoze『ANIMA』@BnA_WALL

昨年上演されたイマーシブシアターのブラッシュアップ版。

前回はダンサーの中に一人だけ女性の役者さんが混じり、セリフは全て彼女が担っていたのが、今回は役者が彼女含め3人に増え、歌まで歌っていた。

今回、制作にクレジットされた東宝の最大の意味はこのキャスティングらしく、この新たに加わった男性キャスト2名はミュージカル系のアンサンブルさんだった。

ダンサーさんは前にお見かけした人たちがほとんど。同じダンス系のイマ―シブでもDAZZLEは踊ってるなーという感じなんだけど、こちらはそれぞれ独特のオーラや色気、世界観を強く持っていて、そのオーラに導かれるまま夢の世界を揺蕩って、いつの間にか自分もその夢に溺れてしまうような感覚。

それがDDの魅力だと思っていただけに、役者を増やして言葉数を増やすことはわたしには蛇足に思えた。浦島とユングは似ているかもしれませんね…とか、ご丁寧に説明していただかなくても十分表現できてると思います…。

上演前に集合するホテルのロビーに置いてあったカルテに見立てたキャラ紹介表はなんとなくDAZZLEっぽいし、美術らしいものはほぼほぼなくホテル備え付けのアートを借景的に使っていた前回から大幅に増やした小道具や部屋内の装飾は、これまた泊まれる演劇やDAZZLEを思い出させるような。あと、ゲストに問診票的なものを書かせるくだりがあって、ちょっとメンタルケア寄りに持ってくのも泊まれる演劇っぽいなと思った。わたしが他団体を先に見てしまってるからそう感じるのだろうけど、このカンパニーの良さはノンバーバルの表現力にあると思うので、今後はそこを活かせるアプローチがみたいなと思いました。

ハリー・ポッターと呪いの子』@赤坂ACTシアター

ロングランだとついつい後回しになってしまいようやく。可能な限り情報をシャットダウンして臨んだ。前に出張がてら赤坂周辺の下見?は来ていたけど、ジョン・ウィリアムズのBGMが聞こえるだけでも気分上がりますね。駅周辺がまるっとハリー・ポッターの世界になってるし、劇場内も壁からカーペットまで世界観を統一している。日本演劇界で今できうる最高の没入体験では。

客席に入ると舞台には9と3/4番線…!ハリポタ世代で、原作も映画も全てコンプリートして特に4巻ぐらいまでの熱の入れようは凄まじいものがあった青春コンテンツなので、やはりいまだに昂ってしまう。

冒険の主役となるのは、ハリーとジニーの息子アルバスとドラコの息子スコーピウス。まずはオタクっぷりが最高なスコーピウスに、ええ子に育ってよかった…とすっかり親戚のおばちゃん目線で目頭を押さえる。かつての仇同士の息子たちが友情を結ぶという構図だけでグッとくるのに、二人ともまた瑞々しく良いキャラ(スコーピウス=西野遼さん、アルバス=福山康平さん)で、友情のその先の想いも宿り、めちゃくちゃにエモい。

そして彼らを見守り時に衝突する大人たちは、お馴染みのあのキャラクターたち。子供の時から追ってきたキャラクターたちなので、すっかり大人になって親世代になった彼らには思わず感慨を感じてしまう。 

冒険の主軸はタイムターナーを使ったよくあるタイムリープなんだけど、4巻に登場してヴォルデモートの手にかかて死んでしまうセドリックを取り戻すという大義があるのがミソ。4巻に描かれた世界に何度もタイムリープして、見知ったシーンやキャラクターたちの登場にワクワクが止まらない。

ところが、タイムリープを繰り返す度に事態はどんどん悪化して、遂に元の世界とは真逆のヴォルデモートが勝利した世界に行き着いてしまう。そこではまさかのスネイプが生きていて、ロンやハーマイオニーたちとレジスタンス活動をしている。さすがにそれは反則やんと思いながらも、孤独の殻を破りふたりに軽口を叩く姿には涙が溢れた。

この並行世界はもう号泣必死で、この世界では結婚していないロンとハーマイオニーの掛け合いもだし、スネイプにハリーの子供の名前がアルバス・セルブスだと伝えられたことも、めちゃくちゃファン感謝祭的でベタだけど、このif見れて良かったー!と胸が熱くなった。スターウォーズで観たかったの、これやん!

魔法の表現は、早替えや人海戦術のようなアナログなものから本水、本火、フライングのような大掛かりなものまで多種多様。手を替え品を替え、4時間近い長編をとにかく飽きさせない仕掛けを張り巡らせている。

かといって、大掛かりなセットが多いわけでもなく、たとえば各々のトランクを積んでホグワーツ特急に見立てる、場転はダンス、組み分け帽子は人、みたいな、いかにもな演劇的手法を取っているのも演劇の底力を見せつけるようで面白かった。

ただ、さすがハリポタだけあってコスプレをして見に来てる子たち(それもガチオタというわけではなくUSJに来るようなノリ)や映画のCGの魔法を観慣れた観劇慣れしていない人たちにどれだけ届いているんだろうとは思った。

最後もハリーとアルバスの二人芝居でしみじみと終わるのが舞台っぽくて(原作でもたいていしみじみした感じで終わるのでそれを踏襲しているという意味でもよかった)いいなぁと思いながら、魔法ショー的な部分との振り幅がちょっと腑に落ちなかった部分もあって。というのもハリーの藤木さんが、キャラクターには合っているものの、明らかに台詞術が弱く。。ここの軸がしっかりしていれば、もう少し作品全体がブレなく一本筋が通って見えたたのかなと感じた。あと、ヴォルデモー(トを発音しない)っていきなり言われると、びっくりするよね、という素朴な感想。