だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

『赤と黒』と『バケモノの子』と『CATS』。

赤と黒』@シアター・ドラマシティ

やっぱりこういう少人数もののミュージカルって難しいよね、といういつもの感想。これは韓国ミュージカルにもよくある現象だと思うのだけど、悩んで歌い上げるだけで物語描けてる錯覚に陥ってしまうやつ…。

盆はまったく効果的に見えなかったものの装置はスタイリッシュで美しい(池宮城直美さん)。一方、衣装までは予算行き渡らなかったのかと邪推(有村先生なんだけど)。

1幕はダンサーも入った盛り上がるミュージカルナンバーが多い。三浦さんも踊れるし、なによりカッコよくショーアップされていてダンスも照明も素敵で俄然テンションが上がる(振付:アレクザンドラ・サルミエント)。

ところが、芝居になると一気に熱量急降下。カンパニーの人数的に仕方ない面もあれど、少人数の会話→メンバー交代してまた少人数の会話→ソロ曲みたいな流れが多くて構成的にダレるのと、なんかこう…演出家(ジェイミー・アーミテージ)、芝居部分には全く興味ないな?っていうのが透け見えて…役者がそれぞれ勝手に芝居してる風に見えました。演出家と作品のマッチングは果たして正しかったのか‥?

キャストは、絶賛売り出し中の若手を実力派が支えるという構図は大変良かったのですが、そもそもの作品の問題もありつつ、真ん中はもうちょっと勢い、熱量が欲しかった。ねねさんは宝塚らしい品のよさで衣装の着こなしも美しい。毎回観るのが楽しみな芽実ちゃんはキュートだったけど、『ヘアスプレー』『MEAN GIRLS』には及ばず。

東山さんはクセの塊でめちゃくちゃ面白かった(出だしからして主役ばりに出てくる)。この単調な中にはむしろあれぐらいの濃さでちょうど良かったのかもしれない。

『バケモノの子』@大阪四季劇場

久太が成長してからは比較的テンポよく進んでいく(舞台での子役と大人キャストの入れ替わりはやっぱりベルばら方式なんだなと思った)ものの、前半戦がかなりかったるい。

要所要所に出てくるパペット(トビー・オリエ)はもはや四季の十八番的な感じで見せ場として成立している。かたやプロジェクションマッピングを交えながら切り替わっていくバケモノの世界と人間の世界はいたって正攻法の見せ方で、パペット以外で、これは!というシーンはなかったというのが正直なところ。

原作未見かつファミリーミュージカルのターゲット層からも外れてるのであれなんですが、せっかくのファンタジーなのでもうちょっと派手な演出も観たかった気が。あと、お母さんの出方はこれでええんか(デハケの処理や立ち位置など)…と思いました。

音楽(富貴晴美さん)は劇伴に歌詞がついたようなイメージ(最近だとかみむらさんの『SPY×FAMILIY』の印象に近い)。この音楽感で生オケではなく録音だとよりチープに聞こえてしまうのが辛かった。ゴーストどうなるかな‥。

印象に残ったのは、主人公を取り巻く三枚目系賑やかしキャラ多々良役を演じていた川島創さん。こういう役をしっかり手堅く丁寧に演じられる人って本当に貴重だと思う。途中から勝地涼に見える呪いにかかったけど(お顔の系統が似ている)今回ベストだった。ティモンもやってらっしゃるそうなので、そちらも観てみたい。そういえば、九太はジェアンで観た貞松さんだった。なんか戦隊ものとかにいそうなビジュアルじゃない?
子役ちゃんは声変わり間近っぽく歌いにくそうにしていて可哀想だった。あと、さすがに書けないのだけど、なかなか舞台で見かけないというか、芝居以前に(芝居もだけど)、え、大丈夫なん?というキャストがいて、逆に目が離せなくなってしまった。

『CATS』@名古屋四季劇場

名古屋出張がてらの観劇。子供の頃に名古屋、大阪で観て以来なので20年ぶりぐらい?とはいえ、学生時代にCDをよく聴いて一緒に歌っていたので楽曲や歌詞はゴリゴリ頭に入っている状態。

客席に一歩足を踏み入れるだけで、CATSの世界が広がりテンションが上がる。

音楽とは反対に、視覚的な情報は抜け落ちていて、のっけから盆回ったり猫の目が客席で光ったりと全く記憶にないこと続きで新鮮に見ることができた。

大人になってから観るCATSは変なミュージカルやなというのが第一印象。これほど「考えるな感じろ!」に振り切った作品、他にないのでは。子供の頃、何の疑問も抱かずにちゃんと受け入れてたのが逆にすごい。昔観ていた頃にはいなかった知らん猫ランパスキャットの入れどころもマーベルの悪役みたいないでたちも謎で、ますますカオス化が進んでいた。

猫紹介、そこにいきなり挟まるマキャヴィティとグリザベラ、マンカストラップがどうしても喋りたいらしいランパスキャットの物語、ガスに至っては劇中劇にまで飛躍して、グリザベラでしっとりと締めるかと思いきや、朗々と「猫は犬にあらず」。なんやこれ?!ってなるよね。

それでも、猫たちが激しく踊り狂うのを観ていると血が沸き立って一緒に踊りたくなるような衝動に駆られるし、猫たちが縦横無尽に動き回る、舞台、客席の区分なく仕掛けに満ちた空間は、舞台を観にきたというより、猫の住処にふらっと遊びに来て彼らの気ままに振り回されるような独特の楽しさがある。これは他のミュージカルでは絶対に得られないカタルシスなんですよね。

そして、年月を経て、ガスやグリザベラのシーンがますます刺さるようになっていた。サークルオブライフすることで時の移り変わりを知る『ライオンキング』と老いと追憶の『CATS』。ただただ沁みて、嗚咽した。

聞き慣れていたマンゴジェリーとランペルティーザの歌が変わったのは事前に知ってたので心の準備ができてたけど、ミストフェリーズのナンバーからミストフェリーズのソロがなくなってひたすら無言だったのがショックすぎた。押田ミストフェリーズが良かっただけに余計にショックがでかかった(でも自分のナンバーよりも群舞で真ん中取ってバリバリ踊ってる時の方が活き活きしてた)。