だらだらノマド。

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『ファントム』@梅芸メインホール 感想

2019年に引き続き主演も兼ねる城田優さんの演出。前回の感想はこちら。かなり推していた作品だったのですが…。

kotobanomado.hatenablog.com

ファントム(エリック):加藤和樹城田優(Wキャスト)
クリスティーヌ・ダーエ:真彩希帆/sara(Wキャスト)
フィリップ・シャンドン伯爵:大野拓朗城田優(Wキャスト)
カルロッタ:石田ニコル/皆本麻帆(Wキャスト)
アラン・ショレ:加治将樹
ジャン・クロード:中村翼
文化大臣:加藤将
ルドゥ警部:西郷豊
ゲラール・キャリエール:岡田浩暉

荒田至法 池谷祐子 伊宮理恵 岡施孜 上條駿 川口大地 川島大典 木村朱李
木村つかさ 關さや香 玉山珠理 照井裕隆 遠山さやか 轟晃遙 蛭薙ありさ
増山航平 松島蘭 幹てつや 横関咲栄(五十音順)
少年エリック:井伊巧/野林万稔/星駿成(トリプルキャスト)

エリック=加藤和樹さん、シャンドン=大野拓郎さん、カルロッタ=石田ニコルさんで観ました。

前回印象的だった開場中のイマーシブ演出は、コロナ問題のためロビーでのキャスト稼働はなくなり、舞台上でのパフォーマンス、客席に語りかけるような演出に。ただそのパフォーマンスが、観てるこちらがこの4年間でインプロ系のイマーシブシアターをいくつか体験して目が肥えたこともあるかもしれないけど、どこか手持ち無沙汰気味に見えて…。もうちょっと台詞や演出をつけないと、かえって世界観を壊しかねないのにな…と思った(ちなみに、このシーンに限らずアンサンブルのお芝居がちょっと散漫に見えてしまいがちだった)。

ルドゥー警部のアナウンスや2幕開始の客電チカチカは前回のまま、コロナ対策と両立てでできるイマーシブ演出はやれる限りやっていて、好きな人は好きだと思う。

ほかにもマイナーチェンジした演出がいくつか。

前回の記憶が薄れつつあるけど、映像って使ってなかったような?元々舞台での映像使用があまり好きではないのもあるけど、特にパリの街並みに関してはセットがかなり甘く(エリックの想像上のパリだと思ってる)、更に映像が足されるとトゥーマッチで逆にチープに見えてしまった。客席降りは前から多いなと感じていたけど、さらに増えた気が(気のせい?)。舞台上暗転、客席登場というのがさすがに多すぎて効果的に見えない。あと、振付(新海絵理子さん)も前回と同じなはずなのだけど、映像が加わったりカルロッタの芝居が現代に寄ったせいか、群舞的なシーンで"今感"を強く感じてしまい、19世紀パリの世界観との齟齬が気になってしまった。

一方、変わらず良かったのは、舞台上部に組まれたオケがここぞというところで借景として劇世界に組み込まれること。指揮の森さんが上背があってダイナミックな動きなので「オペラ座の幽霊」は一気にサスペンスフルなムードが漂う。


加藤エリックの作画よしながふみの引きこもりオタクっぷりが相変わらず良い。(HOMEでクリスティーヌと初めて出会った時の挙動不審でいきなり「あ、あなたのファンですっ…!!」と叫ぶ姿に共感しかなかった。)ただ前回以上に、歌はもう少し聞かせてほしい気がした。
岡田キャリエールは前半観てるとちょっと芝居作りすぎではと感じるんだけど、2幕でエリックとのシーンになるとエリックとキャリエールのお芝居のピントがぴったりと合い、爆発的な化学反応を起こす。宝塚は王道ミュージカル的な盛り上げ方をしていてそれはそれで良いけど、あえて二人が向かい合わずぽつりぽつりと言葉をかわし次第に思いが溢れ出る二人の姿が大好きで。城田さん演出版の中で秀逸のシーンだと思ってる。
真彩さんはお歌もお芝居も手堅く安定。でも退団後観てきた「天使にラブ・ソングを」「ジキル&ハイド」と今回の3本の中で一番良いのは意外にもジキハイのルーシーっていう感想は変わらなかった。よくも悪くも宝塚的に見えて想定内というか。
大野シャンドンはすっかり貫禄がつきすぎて、4年前ならまだしも今更感が…。シャンドンは自分の権力や影響力に無自覚でもっとキラキラしたボンボンでいてほしい。分別ある大人に見えると、女の子たちとの絡みが無駄にグロテスクに見える。

カルロッタは前回のエリアンナさんでもギリギリ感があったけど、石田さんはさらに厳しかった。この『ファントム』の世界観、そしてマダムカルロッタにはそぐわず、ただのギャルになってしまってるのが辛い。歌のテイストも石田さんの持ち味とは合致していなくて面目躍如とはならず。『MEAN GIRLS』のレジーナは最高のハマり役で、役にハマった時の輝き、コメディセンスがあるのも知ってるだけにとても残念だった。カルロッタを取り巻くショレや文化大臣らセミプリチームも弱くカバーしきれない。

この役、奇を衒わずに普通に歌とお芝居が上手くてマダム感のある40、50代キャストでいいと思うのだけど…番手やらを考えると逆に難しいんか…。色んなカルロッタを観ては、出雲綾様上手かったな…と思い出に浸ってしまう。

今回は同時期に『ノートルダムの鐘』をしこたま観たこともあり、作品同士の響きあいを感じた。外の世界の美しさ、残酷さを知ったカジモドと、イカロスの如く光目指して飛び上がったものの力尽きて外の世界をついぞ見ないまま死を迎えるエリック…。

ベラドーヴァの場面なんか、エピソードも画的にも重なるよね。そしてもしフロローとカジモドがキャリエールとエリックのような関係性になれていたなら…と思いを馳せてしまう(絶対あり得ないことではあるけど、カジモド、フロローを演じた、海宝さん、野中さんコンビでエリック、キャリエールを見たらもう情緒が死ぬと思う)