だらだらノマド。

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『Venus of Tokyo』@お台場ヴィーナスフォート 感想

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常設ということでつい後回しになっていたVenus of Tokyoに、イマ―シブシアターに興味を持つ同僚と行ってきた(さも今行ったかのように書いてるけど11月の話)。


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ブックレットと10000void(紙幣)を受け取り、黒のマスクに付け替えてから入場。ブックレットには簡単なキャラクター紹介やルールが書かれている。表紙に書かれたアルファベット一文字が「スリープノーモア」や「ホテルアルバート」でいうトランプに当たり、グループ分けの役割を兼ねていた。

外観からはかなり狭そうに見えて、ここで本当に回遊型のイマーシブできるの‥?と心配してたんだけど、中に入ると2階建てになっていた。どうやら元居酒屋だったエリアらしい。イマーシブシアターは、階段(階層)と死角がないと面白くないバリアフリーとは真逆の発想だと思っている。南座『サクラヒメ』は舞台と南座のフルフラット化が出発点になっていて根本的なところから相いれなかったので、少なくとも今回は自分が思っているイマーシブシアターらしいと、階段を上がる時点でテンションが上がった。

まず誘導されるのは、オークション会場。ブックレットに書かれたグループごとに着席する。開演10分前までは入場時にもらった10000voidを使ってバーでドリンクが飲めるシステムになっていた(知らなくて入場前にドリンクがぶ飲み)。

お面をつけたダンスシーンから始まる。どこか「スリープノーモア」の晩餐シーンを思い出させるような雰囲気で、一気に期待値があがる。そこからはグループごとに各部屋に誘導される。なんとなく主要キャラクターを把握したところで再びオークション会場に戻り、いざオークション。ちなみに、私が参加した回はキャラクター達しかオークションに参加してなかったけど、リピーターが実際に参加する回もあるんだろうか?かなり高額だったし、テンポも早いので入り込むの難しそうだったけど。

このオークション中に、とある事件が発生。ここからは、気になるキャラクターを個々で自由に追う展開に。といっても、そこまで部屋数も時間ももないので、かなりあっさりめ。私は、さほど惹かれるキャラクターもおらず、確信をつくようなシーンはほぼ見れなかったので、結末にも納得感はわかず、へぇ‥!となっただけだった。(結末を変えるのはリアル参加者?配信の人達?そういうのもよくわからないまま)

それでも、複数階層を自由に行き来できて、久々に回遊型のイマーシブシアターの醍醐味を味わえたのは嬉しかった。一緒に行った同僚も、初イマーシブが「サクラヒメ」からのこの作品だったから、イマ―シブシアターってこういうことか…!とようやく納得してくれた。

しかも、今回初めて行ってびっくりしたんだけど、会場のヴィーナスフォート自体が独特の世界観を持っていて、それをうまく取り込んだ設定にしていたのが面白い。回遊している時、部屋の窓からヴィーナスフォートの広場が見えることがあっても、世界を損なうことなくむしろ借景的に世界が広がっていく。この場所選びのうまさには驚いた。

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各部屋を彩る美術が、至近距離からのお客さんの視線に耐えうる、そして、思わず触れてしまいたくなるような作りになっていたのも良かった。パフォーマンスエリアとは別に小道具と仕掛けを楽しむだけの小部屋もあったのもワクワクした。

あと、チケットの階級で、通常より3,000円高いプレミアムチケットがあって、参加した回にも何人かいたんだけど、プレミアムの人たちにしかできない体験が多々ありそうなのが通常チケットの人達からも良く見えて、リピーター欲をそそられる上手い仕掛けだなと思った。

一方、入場時に配られるブックレットやキャラ紹介含めて全体的にやたら親切設計だと感じたものの、それが必ずしも物語やイマ―シブシアターという枠組に対する解像度に繋がるわけでもなく…。特に、各キャラクターが喋るド直球な思わせぶり(矛盾してるけど)台詞に、かなり寒くなったんですよね…。こんなに台詞要る…?必要だとしたら、ちゃんとした脚本家を入れるべきだと思う(入れてたらすみません)し、これがDAZZLEらしさと言われるとそれまでだけど、吹替台詞が安っぽさに拍車をかけている。前のめりになれなかった理由は、ほぼほぼ台詞にある。そこで引いちゃった…。

じゃあ、メインのダンスがどうかというと、これも「サクラヒメ」の時とあんまり印象が変わらず、やはり踊る意識が高いからか「面」的なダンスになるんですよね。そうなると、せっかく第4の壁を壊して劇場から飛び出したはずなのに、お客さんとパフォーマーが向き合って、見る・見られるの関係性に逆戻りしてしまう。

私はそれが惜しいと感じてしまったけど、それは私のイマーシブの理想が、イマーシブシアターの表現方法がたまたまダンスになった(ように見える)「スリープノーモア」であるからで、ダンスカンパニーのDAZZLEがやるなら、そりゃ当然ダンスを見せたくなってしまうか…。

あと、職業柄どうしても気になってしまうのが感染対策。吹き替え台詞かつみんなマスクはしているので飛沫対策はクリアしてるとして、もちろんパフォーマーもお客さんもマスクをして手指消毒もした上ではあるものの、パフォーマーが触ったものをお客さんが触ったり(逆も然り)、お客さん同士が触るまではギリセーフとして、床に落ちた小道具をお客さんに渡すのはさすがに気になってしまいました。

…ということで、私はそこまでハマれなかったけど、イマーシブシアター公演のロングラン興行を打つという革新的なチャレンジには心からリスペクトするし、参加回はお客さんがまばらでDAZZLEが好きなんだろうなーというリピーターがほとんどだったけど、もっと若い子に人気が出てイマ―シブシアターを知るきっかけになればいいのに、とは思った。ヴィーナスフォートの閉館に伴って3月で終了なので、興味ある方はお早めに是非!

初お台場。近未来の人工都市感があって面白かったしリラックスもできた。また行きたいー。

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