だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

『TOKYO LIVING MONOLOGUES』とインターメディアテク。

11月、出張と絡めて行ったもの2つ。

 

 

 

DULL-COLORED POP『TOKYO LIVING MONOLOGUES』@STUDIO MATATU

www.dcpop.org

これをイマーシブシアターと言うのはちょっと違う気もしているけど、作り手側がイマーシブと謳っていたので、一応「イマーシブ的なもの」カテゴリに。
登場人物は4人。御茶ノ水にある小さなスタジオの四方にそれぞれが暮らす部屋の一室がブース状に作られている。観客は入場時に手渡された仮面を付け、仮面越しにそれぞれの生活を覗き見る。そこでは、普段、絶対他人には見せない生々しい姿も露わにされる。

4人それぞれに現代的な諸問題を抱えている。ブラック企業勤務(この演出は開演前から思わぬ形で仕掛けられている)、ネトウヨ、介護、ゴミ屋敷、ネット依存…など。彼らに共通しているのは、金銭的・精神的な貧困と孤独。みんな繋がりを求めてもがいている。唯一、それなりに楽しく生きていそうなカルチャー系女子ですら、実は陰謀論に染まっていて、ネトウヨおじさんと全く同じフレーズでyoutubeを通じて陰謀論を伝播させていくのは、衝撃的だった。
場内のそこかしこにカメラ(スマホ)16台が備え付けられていて、ライブ配信ではzoomでこの映像を同時並行的に観られる。会場の観客は、客席でこの配信を同時に観ることが推奨されている。というのも、壁面に沿ってブース状に部屋が作られているので、どの席に座っても4人全員の行動や部屋をすべて具に見ることはできないんですよね。目の前の4つの部屋とzoomの16の部屋をザッピングして、死角部分をこの映像で補填しながら、覗き見ることになる。これは学生時代にに興味を持っていた、あえて死角のできる装置を作って、見えない部分の芝居のライブ映像をスクリーンに映し出すカストルフの演出が、時代を経てアップグレードされたような感じで、面白かった。
加えて、映像は視覚を補完するだけにとどまらず、youtuberの設定の女性2人の配信映像が始まったり(ASMRの時にはイヤホンが推奨される)、終盤には16の映像から1つの映像に切り替わり、あえてイヤホンなしで音を会場内に響かせるよう指示され、重要なシーンに展開する仕掛けもあった(正直、物語の山場に集中したい観客には不意打ちすぎて、物理的にうまくいっていなかったと思うけど)。

そう、観客も演出の一つに組み込もうとする仕掛けでいうと、冒頭に配られた仮面を着用してスマホタブレットで映像に没頭する観客の姿がまるっと、知らず知らずのうちに物語内に取り込まれている。ネット上の見ず知らずの人達の熱弁を真に受けて陰謀論に浸かった挙句、覆面姿で襲撃事件に向かう4人とシンクロしている。…と、気づいたところで終演。

当初は食欲を刺激した肉を焼く匂いが、中盤の焼肉リプライズで意味が変わり急に吐き気を催すように、こういう意地悪い仕掛けには面白さを感じつつ、描かれる”リアル”の限界や、その先の演劇的な膨らみがないように感じた。

あと、劇場以外のパフォーマンスでは毎回書いてる気がするんだけど、2メートルルールはどうなってるんだろう?わたしはすぐ隣に部屋がある一番端の席に座っていたんだけど、マスクをしていない役者さんが明らかに2メートル未満の距離で台詞を喋りまくってたよ…。

インターメディアテク

www.intermediatheque.jp

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東京駅前KITTEの2フロアを使った日本郵便と東大の共同運営による次世代型ミュージアム。以前、VIRONに行く途中に見かけたポスターのハリー・ポッター的な?美しさに衝撃を受けて、ずっと行ってみたいと思っていた。実際に訪れてみると、展示品(骨格標本が多い)を取り囲む什器やキャプションの質感まで抜かりなく、うっとり。ロマンや憧れをたっぷり込めて、学術の場ごと再現されている。世界観に圧倒されて何周もしてしまったけど、窓から見える景色はTOKYOで、不思議な気分だった。

館内の至る所で宣伝されていた専用のアプリon IMTをダウンロードしてみると、GPSを使ってエリアごとに説明してくれるディレクターズボイスやBGMが聞けて、なおさら楽しめる。
いかにもイマーシブシアターができそうな空間だなぁ…と思っていたら、実は「演劇×ミュージアムの実験」をテーマにした「Play IMT」という取り組みがシリーズ化されていて、このBGMはその時の音楽らしい(どう聴いても闇落ちした科学者みたいな曲が2曲ほどあって、現場で聴くと臨場感がすごい)。素晴らしいね…!play IMTは2017年で一区切りついたようなんだけど、是非またやってほしい。

www.intermediatheque.jp

基本的には撮影不可なのでお伝えできる写真がほとんどないけど、これだけ充実しててなんと無料だし、東京駅すぐそばなので、地方組が出張や遠征時にふらっと寄るのにもおすすめ。クリスマス限定で、蓄音機でジャズが聴けたり、撮影OK箇所が増えるイベントもあるようなので、これもいつか行ってみたい。