だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

3月のたしなみ(随時更新中)

 

 

『ビクター/ビクトリア』@U-NEXT

歌唱力は抜群なのに売れないソプラノ歌手ビクトリアとクラブでひと悶着起こしてクビになったゲイのコメディアン トディ。崖っぷちの二人が意気投合、ビクトリアを「女装する男性歌手ビクター」として売り出すと、これが大当たり。ところが、性別を偽ったがゆえに勘違いが勘違いを呼んで…というドタバタミュージカルラブコメディ。

最後には女性の姿に戻って男性と結ばれ、めでたし、めでたし‥というご都合主義な話なんだろうなーと思って見ていたら、意外とビターな話だった。
ビクトリアと結ばれるキングはギャングということもあって、暴力的で男性優位主義的、"男らしさの権化"のようなおっさん。ラブコメに相応しい軽やかな魅力を兼ね備えていない(ので、ビクトリアがどこに惹かれたのかもよくわからない)。そんな彼でも、ビクターに扮しているビクトリアとの2ショットは側からみればゲイカップルに見えるわけで、彼自身、そして彼が属するコミュニティにとっても許されるものではなく、ビクトリアと会う時にはできる限り人目を避けるし、女性の姿に戻そうと躍起になる。

かたやビクトリアは、自分の性自認ではなくショースターとしての活躍のために異性装をしているわけだけど、キングがギャングではない”振り”をしてビジネスをしているのと同じだと指摘し、なおかつ、男性に扮して生きることで気づいた女性の抑圧や不自由さも吐露する。お互いに、そういう自分の思いやジレンマを伝え合うシーンはあるものの、結局歩み寄れないまま大団円へと向かう…。

ビクターの身バレをすんでのところで回避して、キングの傍らには無事、男性の扮装を解いたビクトリアが現れる。一応、これでハッピーエンドを迎えたことになるのだけど、彼らが見つめるステージでは、ビクトリアの代わりに主役を張るトディが、男らしさ、女らしさから逸脱したキャラクターを演じて笑いものになっている。つまり、ビクトリアの異性装がもたらした、窮屈な男らしさや女らしさから抜け出せるかもしれない可能性はすっかりなかったかのように元さやに収まり、性規範の逸脱は劇中劇のギャグとして消化される。そして、これでエンドクレジットに突入。え…この映画、実はめちゃくちゃブラックなのでは‥。

『殺人ゲームへの招待』@amazon prime

『ビクター/ビクトリア』でステレオタイプ的な金髪美女を演じていたレスリー・アン・ウォーレンを調べてたときに見つけた85年公開の映画。ボードゲーム「クルード」を元にしたミステリーで、上映劇場ごとに異なる3つのエンディングが用意されていたらしい。この年代ですごくない?

謎の男に招かれた秘密を持つゲストたちの密室ミステリー劇。その設定からして面白いはずなんだけど、蓋を開けてみれば、付いていくのがしんどめのドタバタコメディだった。全編にいくつも伏線が張られていて、そのうちどれを選択するかで3パターンそれぞれの推理につなげられるようになっているものの、それってつまりどうにでも転ぶように作られているということで、推理の説得力に欠ける。公開年を思っても企画そのものは画期的ではあるけど、中身が追いついていないように思った。今やるなら、内容をブラッシュアップするのは前提として、それこそ「バンダースナッチ」的にインタラクティブ作品にしたら面白そうだけど。

とはいえ、当時の観客の反応は気になるし、「ランローララン」的なifの世界を描くものも含め、インタラクティブ技術以前の作品にどんなバリエーションがあったかは興味がある。ちなみに、この映画で思い出したもの。

演劇だと結末を投票で決める手法は割と昔からあると思うけど、この企画は未完の作品であることを逆手に取ってて、めちゃくちゃ面白いよね(内容は観てないので知らない)。

ダウ90000『ずっと正月』@ぴあLIVE STREAM