だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

『ホテル・インディゴ』と『雨と花束』

年末の感想メモ整理。イマ―シブ編。

『ホテル・インディゴ』@HOTEL SHE, OSAKA

『藍色飯店』の体験があまりに素晴らしすぎたので、イマーシブ仲間とは予定が合わず1人参加になったけど行ってきた。

kotobanomado.hatenablog.com

18:30頃、チェックイン。まずフロント・ロビーからしてディズニーランド的な装飾、BGM、コスチューム、ホテルスタッフを演じる役者さんのキャラづけにびっくり。ファンタジー色濃いめ。前回はフロントで時計やスマホを預けた(それも演出の一部)けど、今回は特になく、19:30に再びフロントに集まるよう指示される。前はもっと時間カツカツだった気がする。

19:30フロントでのパフォーマンス。どうやら我々はホテルアルバートタワー・オブ・テラーを混ぜたようないわくありげなインディゴホテルのホラーイベントの参加者のようで、次々に現れるキャラクターたちがこのホテルの説明をしてくれる。かと思ったら、ファントム的な怪人が現れ女性を連れ去って…。

お客さんたちは3チームに分かれ、それぞれ1〜3階をキャラクターたちに導かれながら、連れ去られた女性の救出に向かう。すると、誘導してくれていたキャラクターもまた謎の人物に連れ去られ部屋の中に消えてしまい…。

以降は、藍色と同じようにホテル内を自由散策できるようになる。藍色では扉は閉まっていて、自分で開けないとでんな世界が広がっているかわからなかったけど、今回はずっとドアが開いた状態だったので、随分ハードルが下がっていた。部屋内のセットは大幅にパワーアップし、ホテルの部屋とは思えない程の凝りよう。

各部屋にはさっき謎の人物に連れ去られた人達もいて記憶が錯綜しているんだけど、部屋を巡るにつれて、いわくつきの過去とオカルティックな仕掛けがだんだんと見えてくる。記憶をめぐる物語であり、実はそれらが繋がっているというのも藍色同様(どうやら三部作らしいね?)なおかつ、305号には見覚えある光景と音楽が広がり、明らかに藍色の世界を過去として語るキャラクターもいた。藍色と違って、最後のロビーでのパフォーマンスでは一応謎解きというかオチはついていた。

うーん…記憶の物語、物語(絵本)と現実の重なり、自分の"半身"との出会いとかはすごく好みでその複雑も好きなんだけど、その辻褄合わせで説明台詞が増える+サスペンス・アトラクション要素と盛りだくさんで、さすがにちょっとモリモリしすぎてるなーと感じてしまった。

あと、『藍色飯店』があまりに絶妙すぎて…。その理由は冒頭に貼った文章にまとめてますが、改めて書くと、まず、中華っていうファンタジーの飛躍度の絶妙さ(リアルと物語を橋渡しする朝倉さんというキャラもいたし…)。
今回は、あーアトラクションだなーというところから始まって。「わたしのこと、アリスって呼んでね!」と言われた時の、こっちの乗っかり具合のエネルギーは藍色と比べられないほど高カロリーだよね…わたしは別に参加したい派ではない(参加型イマーシブが好きなわけではない)ので、その辺りのハードルが高かった。

それに、『ホテルアルバート』的なミステリー風導入になっていて、そこから謎を追うぞ!のスタンスになっていたんだけど、そこから始まるのと『スリープノーモア』や『藍色飯店』のように、いきなり放り出されて物事を追っていく楽しさの違いってありますよね。わたしは後者が好きなんだなと思った
あと、藍色とかぶってるキャストさんもいらっしゃったけど、わたしは前回の方が全体的にしっくりきました〜。なんだか煮え切らない感想になってしまったけど、それだけ藍色飯店が絶妙に好きだったということで…。

『雨と花束』@HOTEL SHE, KYOTO

今回は4人で行ってきた。これまで行った泊まれる演劇『藍色飯店』『ホテル・インディゴ』はどちらも悪い芝居の山崎彬さん作・演出で、今回は幻灯劇場の藤井颯太郎さん。なおかつ前2回は大阪だったので、今回は初京都でした。

19:30にチェックインで20:30からスタート。これは前回の『ホテル・インディゴ』の1時間遅いバージョン。ホテルの作りは大阪とそっくりで初めて来た気がしない。入った瞬間からまるでディズニーのようなテンションだったインディゴから一転、ロビー、誘導のスタッフさんの雰囲気も程よく落ち着いていて一安心。宿泊者はチェックイン時にそれぞれ花の名前が書かれたカードを与えられて、チェックアウトまで本名を明かさずその名前を使うように言われる。

いよいよ時間になると、ロビーで吟遊詩人のような支配人がギターを奏でてくれる。宿泊者はまもなく死を迎えるという彼が招いた客人であり、実は以前に会ったことがあるのだという。彼の走馬灯の世界へ入るためちょっとした儀式を行う。円になって、子供の頃の記憶を両手の中に閉じ込め、みんなでハミング。すると、たちまち30年前のホテルへと行きつき、30年前の支配人、見知らぬキャラクターたちが現れる。
支配人がかけられた「忘却」という哀しい呪い、『オズの魔法使い』からファフロフキーズ現象に興味を持ち、降り注ぐ花びらを追ってやってきた女性、苦しい片思いの相手の名前を忘れてしまった人、不死と引き換えに呪いをかけられた少女、呪いをかける魔女…本名を聞き出そうと迫るオーナーと名乗る女性が魔女?部屋には不思議な甘い香りが漂ってる。

自由散策中に柱時計の音が鳴り、アナウンスでロビーに集められて、忘却の呪いと美しくも儚いファフロフキーズ現象の本当の意味を知ってしまう。このまましっとりと終わるかと思いきや、最終盤には一度それぞれの部屋に帰らされた上で、コンシェルジュから手紙を受け取り、魔女の眼を盗んでミッションを行うというゲームめいたくだりがあった。突如やってきたかくれんぼコーナーに同行者が全く隠れ切れてなくて爆笑した。それでも結末はやはりしっとり。

作り手が違ってもホテルと記憶という軸は変わらないんだ、と意外に思いながらも、梅雨時のアンニュイな気持ちによりそいながら、雨と記憶を結びつけるいい温度、湿度感の素敵な作品で、背伸びせずリラックスして臨めたのが良かった。支配人がギターを弾く程度なので、音楽劇と銘打つのは違うのでは?と思ったけど…。

今回は4人で行ったので、ああだこうだ言い合えたのも面白かった(前回仕方ないにしても一人で行ったの失敗だったー)。翌朝、朝食を食べながら、ラジオで物語の続きが楽しめたのも余韻に浸れてとっても良かった。

そう、とある部屋で一緒になった同行者が記憶に封じ込めたい子供の頃の出来事をカミングアウトし始めて、でもそうなってしまうよね…と思った。『藍色飯店』で感じたように、知らぬうちにかなり深いとこまで曝け出してしまうようなカウンセリング的側面がある(それが魅力でもあり逆にちょっと怖い側面でもある)。かたや別の同行者は「何が空から降ってきたら嬉しい?」と聞かれて、「お金!!」と即答したらしい。これもある意味、カウンセリングか。