だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

『VIVA LA VALENTINE』&『呪われたオンラインパークツアー』&『アウフヘーベンの牢獄』感想

オンラインイマーシブ作品の感想をまとめて3つ。

サンリオピューロランド『VIVA LA VALENTINE』

去年2月に配信された、劇団ノーミーツ×サンリオピューロランドの1カット60分生配信コンテンツ。Twitterでおすすめされていて観てみた。

www.puroland.jp

バレンタインショーの本番を間近に控え、練習に励むキティちゃんたち。ところが、スポンサー企業の「大人の事情」によって、演出家ダニエルくんの意に沿わない変更を言い渡されてしまう…。ショーの成功に向けて、キャラクターやスタッフたちが奮闘するバックステージものでありながら、「大人の事情」で妥協してきた人間たちが自分の本心に向き合い夢へと歩みだす、爽やかな話だった。

このシンプルな物語に奥行きを与えているのが、撮影方法。閉園後のピューロランドを実際に回遊しているかのような1カメラ映像。色々な場所で起きる同時多発的なイベントが徐々に繋がっていくような、イマーシブシアター的な面白さが体感できる。

キャラクターたちが本番のために頑張って準備している姿の後ろに、清掃スタッフさんが掃除している姿が映り込んだりするリアルさに、キャラクターやピューロランドが記号的なものではなくて、今ここで本当に生きている、息づいていると思わせてくれる(本番シーンで、カメラがあえて音響スタッフをなめていったのも感動的だった)。

テーマパークが持つ場の力と強いキャラクター力を最大限に引き出しながら、それを単なる夢々しい世界に仕立てあげない。あえて「大人の事情」やキャラクターたちの苦悩も絡めたバックステージものにすることで、視聴者の温度感にも寄り添いながら、夢と現実を橋渡して元気づけてくれる、コロナ禍ならではの最高の企画だったと思う。これを観るとピューロランドに行きたくなるので、そういう意味でもこの企画、正しすぎる。

USJ『呪われたオンラインパークツアー』

11/23に開催されたUSJ初となるオンラインイベント(その後、今年の2月にも再開催された)。コロナ禍になってからUSJのハロウィンイベントにも行けてないので、参加してみた。


www.youtube.com

 <ストーリー>
舞台は真夜中のユニバーサル・スタジオ・ジャパン。 この夜だけに開催されたツアーをオンラインで視聴するあなたたちは、 予想外の怪奇現象の数々、 いるはずのない謎の影を目撃してしまう…。
助けを求める現地参加者の叫び声がむなしく響くなか、 その”呪い”は映像の世界を超えて、 あなたや、 あなたの大切な人に、 忍び寄る…。

オンラインパークツアーという設定のはずなのに、いきなりUSJで「惨劇」が起きているという飛躍がすごい。一般人(仕込みではあるけど)のキャラクターも出てくるのに、USJと惨劇を結び付けるイントロもなくいきなり始まるので、なかなかついて行きづらかった。例えば、ジョーズとかジュラシックパークみたいに、最初は和やかな普通のパークツアーだったのに…みたいな方が没入のハードルが低いように思えた。こういうアトラクションへの誘導部分(パークでいうQライン)こそテーマパークの腕の見せどころだと思うのですが。
ストーリーはそっちのけに、イベント専用のLINEの使用方法とそのアンケート機能システムの練習は入念に行われる。というのも、映像は前撮りなので、ライブ感だったり、没入感、双方向感の鍵を握るのがこのツールなんですよね。
後半は、LINEの伏線が回収されて、LINEが文字化けしてどんどん呪われていく。ただ、冒頭から惨劇やら生贄やらおっかないメッセージが飛び交っていたので、もうちょっと呪い前と後ではっきりと区別がついた方がわかりよかったのかなとは思った。
本編のストーリーはグダグダなものの、後半戦はTwitteryoutube、ブログなどのトランスメディアな仕掛けがたくさん用意されていて、それらをリンクさせながら謎と呪いを解いていくので、盛り上がった(グループで参加するとグループ内のコミュニケーションを促す面白い仕掛けもあったらしい)。
ただ、規模も配信環境も違うので一概に比べられないとはいえ、トランスメディアを駆使したオンラインイベントだと、コロナ禍になって間もない時期の実施だったのに既に完成度の高かった「シークレットカジノ」をどうしても思い出してしまい、よくできてたなーとしみじみしてしまった。

kotobanomado.hatenablog.com

あと、「VIVA LA VALENTINE」のテーマパークの場の力を最大限に生かした演出と比較すると、確かにパークを舞台にしてはいるもののUSJはもっとポテンシャルあるやん!と思ってしまうし、USJのオリジナリティみたいなものはあまり感じられなかった。

よだかのレコード『アウフヘーベンの牢獄』

yodaka.info

「演劇×ゲーム×謎解き」「かつてない体験・イマーシブミステリー」のコピーに惹かれて、旅行中に金沢から参加。ホテルに戻ったのが開演ギリギリで、3分程遅れて入ったら、どうやら本編開始前に告知されたらしいLINEのオープンチャットで既にやりとりが始まっていたらしく、いきなりついていけなかった(公式TwitterのDMで教えてもらった)。案内役はいるものの、基本的には2.5次元系の俳優さんの一人芝居。監獄に捕らえられた記憶喪失の主人公の脱出を視聴者が手助けをする、というシンプルなストーリー。

主人公の代わりに視聴者が各々謎解きをしてオープンチャットに答えを書き、それを主人公が拾いながら進行するんだけど、視聴者数が多く、メッセージが凄まじいスピードで流れていってしまうので、スムーズに拾えない(ちなみに、このオープンチャットには、謎のキャラクターのメッセージが何度か書き込まれるけど、それもあっという間に流れ去ってしまう)。

おまけに、役者さんから視聴者への投げかけが「この謎わかりますか?わかったら答えを書いてください」「みんな頑張って!」「◯◯さん、答えがわかったんですね、すごい!」みたいな貧弱なもので、それは双方向性とは言わないというか。それはただのクイズ番組であって、物語への没入感を担保する仕掛けにはならないよね、と思った。しかも、謎解きの内容も物語や世界観に関わらないものが多いので、二重の意味で、物語世界を強化しない。

途中から参加する意志も弱くなって、ラーメンをすすりながらぼんやり眺めようとしたんですけど、そんな暇はないんですよね。ZOOMで映像を見ながら、LINEのオープンチャットも眺めつつ、WEBの探索もしなければいけなくて、ipadiphoneの2台体制でも忙しなく、あたふた。それでも慣れてる人は謎をガシガシ解いていくので置いてきぼりを食う。ストーリーが面白ければそれでもそれなりに楽しめたかもしれないけど、最後のどんでん返し以外、ほぼ筋は無いに等しいので、鑑賞として楽しむこともできない。

USJのオンラインイベントは、ベースは前撮りの映像で、一緒に参加してるグループ内のコミュニケーション/LINEアンケートのみで双方向性を生み出す、と潔く割り切っていた。それと比べると、物語とライブ感のバランスや双方向性を生み出す仕掛け(システム)の吟味が甘いように思えた。それに、謎解きの質はあまりわからないけど、松竹が企画に入っているにも関わらず、演劇やイマーシブシアターと謳うにはあまりに物語が貧弱で「演劇×ゲーム×謎解き」のジャンルの掛け合わせが実現していない。もしまた同じような企画があるなら、システム・内容の双方から改善が必要だと感じた。大手演劇会社の中で真っ先にイマーシブコンテンツに取り組む松竹さんへの期待値が高いだけに…!