だらだらノマド。

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『アラジン』と推しジャファーと共に気づいたら2024年を迎えていた話。

2022年の初見時には、自分の好み的な問題でおそらくもう二度と見ることはないだろうと思っていたんですが、気づいたら11月、1月と3回観てました…。初見時の感想はこちら。

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11月観劇のキャスト。

1月観劇のキャスト。

ちなみに、タイトルの「推し」とは『ノートルダムの鐘』で沼落ちした野中万寿夫様のことです(さすがにタイトルからフルネームを外すことを覚えた)。野中さんがジャファー様として降臨されたのが今回の観劇のきっかけとなりました。

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キャストが変わると全然違った

保守点検中にちょこちょこ手直しが入ったようでカットされたセリフもあったみたい。わたしは初見時の記憶がそこまでなく脚本や演出上の変更点はわからなかったけど、初見時とキャストがほぼほぼ変わっていたので受ける印象がまるで違っていた。

まず、この作品の要になるジーニー。瀧山さんはアニメ版とブロードウェイ版のいいとこ取りのようなすぐ人の懐に入るフレンドリーなキャラで、アラジンとのマブダチ感はもちろん、客席に目配せて語りかけながら、第四の壁を壊していつの間にかお客さんともマブダチになってく感覚。

メタネタが散りばめられた台本かアドリブかわからない台詞を矢継ぎ早に繰り出して、物語の内と外を自在に反復横跳びするセンスが抜群で、ハマり役とはまさにこのこと。本当に理想的なジーニー、狂言回しだと思う。素晴らしかった!

四季の役者さんって宝塚のすみれコード的な”お上品さ”を持ってらっしゃるイメージだけど、いい意味で全く四季らしくなく泥臭さみたいなのも感じられて良かったし、野中さんとは芝居の持ち味が全く違うので、『ゴースト&レディ』で同じ役を演じるお二人それぞれのアプローチがますます楽しみになった。

一方、デビューしたての岩城さんはスピーディなセリフと段取りをこなすのにまだ精一杯という感じ。瀧山さんのような王道路線ではなく、独特のピュアさとナイーブさを持ち合わせたマイペースなキャラクター像。本来この役はニンではないと思うのだけど、この独特の持ち味が磨かれればまた違ったドラマと友情が生まれてきそうではあった。あと、歌が上手い。

ただし、さっき書いたようにジーニーはかなり複雑な役回りのため、例えば「フレンドライクミー」終わりで、疲労困憊で倒れ込むとか、この役降りるわ!と楽屋に戻るとか、アドリブと台詞、メタと劇中、中の人と役柄の境界があやふやになる生感みたいなものが欲しいところも他の台詞と同じ温度感なので、笑いに繋がらないしちょっとした混乱が起きてしまうのがもどかしかった。

これは演出家がもうちょっと演出つけるべき案件だと思うのだけど、四季みたいなロングランだと難しいんだろうか‥四季の海外案件のプランナー事情や劇団内のスタッフの役割がいまいちわかっておらず。

アラジンは3回とも厂原さん。ビジュアルが素晴らしく、ふた昔前のジャニーズっぽいキラキラを放っててつい目で追いたくなる。光GENJIあたりのメンバーにいそう(褒めてます)(光GENJI詳しく知らんけど)。

よく考えたらまぁまぁクズなのに、顔の良さと人たらしな性格で運を引き寄せて、終始ニヤついてヘラヘラしてるくせにむしろそれが魅力になって誰からも好かれるというアラジンの謎スペックを体現できる天性のアラジン役者だと思う(褒めてます)。

アニメ、映画、ミュージカルと観てきて、初めてアラジンのモテる理由が分かった気がした。お姉さま方が市場で逃走を手伝ってあげるのも納得しかなかった。わたしもあの場にいたら全力で逃がす。物語の中心になる華と説得力がしっかりありました。

ジャスミンは竹内さんが明るく溌溂とした漫画・アニメのキャラっぽい雰囲気、木村さんが現代っ子風でひとさじの色気も感じさせる実写版て感じ(『アラジン』のアニメ、実写版に似てるということではなく)。厂原アルと並んだら、竹内さんとだと二人とも愛嬌たっぷりの可愛らしいディズニー的なカップル、木村さんとだと高嶺の花を射止めた生っぽいカップルに見えてどちらも素敵だった。

アラジンの3人の友人たちは元々の脚本上の問題でなかなか寒くてキツイものの、カシームの狩野さんの間が良くて救われてる部分があった。ちなみに、バブカックを演じてたのはレ・ミ時代から観ていた長尾さん。

11月は瀧山さんで狂言回しの力が異様に強かったので、ジーニーが物語る枠組みの中の個性豊かなキャラクターたちというイメージ。ただし、他のキャストもかなり強めだったので、愛嬌度、熱量も全体的にめちゃくちゃ高めな仕上がりになっていて、初見と同じ作品とは思えないし、何ならここまで躍動感のある四季公演は初めて見たかも…くらいの衝撃を受けた。

話の筋はほぼないに等しいのは確かなんだけど、ぼんやりとしていた各キャラの輪郭がくっきり感じられてそれぞれに魅力を感じられたし、何より描かれる世界が鮮やかに息づいて見えたのが良かった。

1月は11月よりそれぞれのキャラクターに力が分散して、少し落ち着いて観れたイメージです。我がエスメラルダ松山さんがアンサンブルに入っていて、バキバキの身体でキレよくにこやかに踊られていたのを観れたのも嬉しかった。「プリンスアリ」だけでもキラキラのお衣装3着早替えってすごいよね。

野中ジャファーが可愛すぎて目をむいた

まずジャファーのお役についてなんですが、初見時の感想に一言も書いていないくらい印象が残らず、悪役好きとしてはあまり心躍らなかったんですよね…。アニメ版のようなジャスミンとの絡みが時代にそぐわないのは承知してるのですが、なら他の見せ場くれよ!と思うし、何より思いっきり幕前芝居要員で、ほぼ全ての出演シーンが場転中の幕前芝居というのも許せんと思ってまして。

しかし、さすが推し。漆黒のローブに身を包んだ風格あるイケオジながら、時にはあからさまに遜ったり、悔しさ溢れてぐぬぬ‥してみたり、物腰柔らかなジェントルマンを装ったかと思えば、悪い顔で高笑いしてみたり(「悪人笑いをしたくなったな」ってなんやねんとは思うが)、権力を手にするために奔走するジャファーを、幕前芝居とは思えぬ奥行きで活き活きと演じられていました。

特に、本性を隠して胡散臭い笑顔でやたら優しげに下手に出る上手いんか下手なんかわからん擬態っぷりやボロが出た時の苦し紛れの誤魔化し方が、なんとも言えない可笑しみと可愛気があって…。長年王位継承第2位のまま媚び諂いも辞さずに虎視眈々と権力の座を狙い続けてきたら、それがいつの間にか身に沁みついてチャームの一つになってしまった、みたいな感じで大変大変好きでした。

そんな魅力が詰まってるのが「ダイヤの原石」。これも場転中なので前っ面でむやみやたらに右往左往してるのですが、上手でも下手でも楽しませていただいて逆に感謝の気持ちでいっぱい。

曲前のやたらええ声の「君に頼みがあるのだ‥」からして最高ですし、そこから甘い声でアラジンを褒めそやかしたかと思えば、お首フリフリさせながら人畜無害っぷりをアピールしてみたりと余裕綽々で丸め込もうとしてたはずが、意外とアルが話に乗ってこず、思わず「ぶっ殺すぞ!」と本性が出そうになってとっさにオネエ風味になる詰めの甘さだったり、「君は捨てられるさ」と最後の切り札を切るのがあまりにも必死の形相だったりと、ジャファーというキャラクターの愛らしさがあまりにもドラマチックに襲ってきて震えました。その後、冷静さを取り戻して「自己分析してる場合か!」とツッコミ入れてるのも好きなんですが。

ソロナンバーとして歌い上げるのは短いながら終盤の「プリンスアリ」のリプライズの方で、こちらの最後の盛り上げ方もさすが。さっきまでの可愛げが嘘のように、求心力が一気に高まり、その後のアラジンとの問答も含め、この作品唯一のピリッとした緊迫感が漂うのも素晴らしいのですが、「覚悟しろ」も上手いけど「スカー王の狂気」が上手いのもっとすごくない?!というのと同じ感覚で、「ダイヤの原石」1曲でこれだけキャラクター像が見えるのに大感動でした。これは特に1月の観劇で感じた。

そして60代男性にこういう表現もどうかと思うのですが、可愛さが大爆発していた。この間までイケ散らかしてた人がこんな可愛いなんてこと、ある…?(白目)

あと、かったるい記憶のあったイアーゴとの掛け合いも間合いもよくメリハリがついてダレなかったし、ジェントルを装ってアルを法律違反の罠にかけるところも好きだったな。振り切ったコミック的なシーンからミュージカル的に盛り上げるところ、ナチュラルなお芝居で見せるところの塩梅というのか濃淡というのかが今回も絶妙で、本当に大好きな役者さんなんだなぁと改めて感じた。

あまりにフロローが好きすぎるので、『ノートルダムの鐘』途中抜けでジャファーって…ていう恨み節もあったけど、「最高。もっと観たかった」という結論に至りました(ちょろい)。フロローとは正反対と言っていいベクトルのお役ですけど、どちらも最高にハマってらっしゃるし、この可愛げはフロローでは見れないですからね…プライスレス。本当にあの可愛さ、なんなの…(頭を抱える)。欲を言えば、最後の三変化をもっとじっくり見たかったですね。

というか、スカーやフロロー、ボリンジャーを観てると、少し影や孤独を感じさせるお役がぴったりだと思っていたのですが、こういうお役も最高なんですね…!と発見ができたのが何より嬉しい。一口に悪役といえど、これだけ演じ分けられるのすごくない…?すごいよ!!!(自問自答)

次は新作の『ゴースト&レディ』。どんな推しの悪役が観られるのか今から楽しみすぎます…!

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