だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

「このテープもってないですか?」の話。

SNSで話題になっていたテレ東の番組の話。ちょうどお正月の「あたらしいテレビ」で「視聴者が吐き気を催すような番組を作りたい」と意気込んでいるのを見た、大森プロデューサーの企画だったこともあり、興味が湧いたのでTverで視聴。

video.tv-tokyo.co.jp

過去テレ東で放送してきた貴重な数々の番組を、視聴者から録画テープを集めて放送するという企画。かつてNHKでもその手の企画があったし、それ自体は別に目新しい話ではない。いとうせいこうらMC陣が、視聴者から集められたという過去の番組VTRを見て、ワイプでリアクションしながら進行していく。

当時のニュース映像をとっかかりに時代時代を振り返りながら、主に取り上げるのは、伝説の番組と称される昭和のバラエティ「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」。パーソナリティの坂上一郎らのいかにも昭和なセクハラノリがきつい番組で、これにはワイプのMC陣たちもツッコミが止まらない。で、この昭和の番組もまた、視聴者のホームビデオを紹介しながら、ツッコんでいく番組らしい。ということは、「このテープ~」は、テープを見る番組、のテープを見る番組という入れ子式になっている。

よっぽど気にいったのか、三夜連続放送の「このテープ~」では毎回「ミッドナイトパラダイス」を取り上げるんだけど、回を重ねるごとにどうもホームビデオの内容が気味の悪いホラーじみたものになり、それを受ける「ミッドナイトパラダイス」の出演者たちの挙動まで違和感を感じさせる。そして、最終的には坂谷はじめ出演者全員が意味不明なフレーズで掛け合い、勝手に盛り上がってしまう。ついには、そのVTRを受けたMCの井桁弘恵さんが狂ったように笑い出したかと思えば、いとうせいこうまで意味のわからないことを喋り始める。まるで「リング」の呪いのビデオのように、VTRを媒介に何かが伝染してしまう…。

ここでネタバラシをすると、実は「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」は架空の番組(あたかも当時放送されていたかのように演出・加工された)ものであり、当然、その中で紹介されるホームビデオも全て偽物。要は「このテープもってないですか」の過去番組を振り返るという企画自体がフェイクで、情報バラエティ番組の皮を被ったモキュメンタリーホラーになっている。(ここで威力を発揮するのがいとうせいこうというキャスティングで、情報バラエティ番組としての説得力を爆上げしている。)
さっき書いたように、ホラー要素だけ見れば「リング」の変奏版のようでそこまで目新しさはない。むしろこの作品のキモは、映画やドラマみたいなフィクションを前提とするコンテンツではなく(もちろんその中にはブレアウィッチのような"てい"を取っているものもあるけど)、ザッピングしながら何となく見るようなTVという媒体で、なおかつあくまで情報バラエティのていで放送するという仕掛けにある。

これ、今回はちゃんと意識的に観たからいいものの、普通に一人でぼんやり見てて行き当たってしまったら、めっちゃ怖ないですか。自分の気が狂ったかと思うわ…。まさに「吐き気を催す」の目標は達成されてると思う。

余談で、雨穴さんの動画は数年前からよく観ていて、去年はその雨穴さんが手がける「なにかおかしい」だったり、SNSで話題になっていた「この動画は再生できません」のようなモキュメンタリーホラーも観た。それらからも感じてたように、「よく見る」→「考察する」ことを促すような仕掛けが流行ってるな、と。これはここ数年の考察ブームがそもそもの根っこにあるのかも。でも、新しい流行りのようでもありながら、「よく見る」ことは、あとから具に見て初めて気づく心霊写真的な振る舞いでもあって(イモータリティが「女優霊」だったように)、ホラーの原点に戻った上での+αなのかも、と。

かなり面白い展開だなーと思いながら、今後も大森さんとホラーの動向を追っていきたいと思います…!(誰目線)