だらだらノマド。

趣味、日常をゆるゆる綴るライフログ。

『ロミオ&ジュリエット』@梅田芸術劇場メインホール 感想

f:id:kotobanomado:20190519162644p:plain

セットや演出に関しては前回を踏襲しているので、印象は概ね変わらず。

前回、思わずプルーンをあげたくなるような血の気のなさだった古川ロミオは、若々しく、顔色も良さそうで一安心。大野くんは、姿勢の悪さ、もっさりした動きが気になった。「僕が怖い」を高音までしっかり歌えているのに、ダンスが段取りになってしまっているのが、あまりにもったいない。

木下さんは何の危な気もない、何ならはすっぱなジュリエット。体型的に白のワンピース+ボレロが似合わず、ちょっと工夫してあげればいいのに、と残念に思った。葵さんは小さく可愛い。リズムが間延びしてしまうのはご愛敬として、驚くほど良く通る綺麗な声で、鮮烈なミュージカルデビューだった。

渡辺ティボルトは、ずっと宝塚の男役っぽいなと思ってたけど、あれですね、らんとむに雰囲気が似てるんですね。作品ごとに歌が上手くなって、どの曲もドラマチックに歌いこなす。木村ベンヴォーリオは爽やか好青年。声量はないものの、癖なくクリアに高音まで出て、ファルセットも綺麗。それだけに、「どうやって伝えよう」のバックに続けざまに出る、あのインスタ画像が可愛そうで。ねぇ…あれはひど過ぎない…?ギリ許されて宝塚のバウじゃない…?この数年のうちにインスタ覚えたんだねぇ…と目を細めかけたが、舞台はそういう場ではない!(その後、オーシャンズでもインスタが出てきていた)もう、みんなで、だせぇよ!と小池大先生に言ってあげようよ。宝塚のノリを平気で持ち込むというか、別ジャンルだと自覚してスイッチできてないのは痛々しいよ・・・。対する三浦ベンヴォーリオは数枚上手。なんせテクが凄い。着こなし、佇まい、舞台での芯の取り方、逆に芯じゃないときの周りとの絡み方、全方向に感覚が行き届いていて、三浦くんが入るだけでロミオたちの関係性がぐっと濃密になった。なので、後半のあのインスタ画像ですら神妙な面持ちで観れたんだけど、マーキューシオのワンショットで、やっぱり面白くなって吹いた。序盤のロミオやロミオママとの寒いやりとりも、木村くんは実直にやって妙な間が空いて寒かったのが、(もはや誰もくすりともしないから)三浦くんは上手いこと小芝居挟んで、自分のテンポ感に落とし込んで防寒対策バッチリだった。(この辺り前回の矢崎くんもうまかった)本来マーキューシオタイプの個性を持っていながら、一歩引きつつ全体のバランス調整役に徹していて、感心してしまった。

黒羽マーキューシオは器用にこなせているのに、薄味。もうちょっと押し出しが欲しい。

大貫死、もう4回目なんだから別役にステップアップしてほしい(とはいえ役の序列的にはロミオ、ジュリエットに続く3番手)と思うのに、いざ見たら、いややっぱこの役は大貫くんしか無理やわ…と悟る。前回からソフト帽を目深に被った「人」の姿になって、より良くなった。「僕は怖い」と漠然とした不安を抱くロミオに、すっと寄り添うような人影。概念としての死。光を放つスターは数多いれど、底知れぬ闇を放てるスターって大貫くん以外に存在するんだろうか。人間の鋳型みたいな美しいフォルム。手だけがアンバランスに大きく異形のものを思わせ、空間を掌握するようにおし広げられる恐ろしさ。ティボルトが、マーキューシオが死に、「死」が概念から現実の恐怖に変われば、帽子もコートも脱ぎ捨て、より一層フォルムが強調され(筋肉以前に骨格が美しい!)ぽっかりと空いた「無」だったものから、一気に生々しく息づく質感が加わる。ジュリエットとの初夜、ロミオは夢の中で死とも結ばれている…。なんなんだろう…あの色気は…。あぁ…もうこれは大貫くんありきの舞台。育三郎や城田くんがロミオをやってた時ほど、ロミオと仲間たちのキャスト差がつかなくなって余計に、死の物語としての側面が強くなった。大貫くん、もちろんメリーや雨に唄えばみたいな、ミュージカルにも出て欲しいけど、こういう彼の稀有な表現力を活かせる舞台にも出てほしい。(オギーと合うとずっと思ってるんですが…)カーテンコールはしっかり笑いを取ってて、こういうキャラクター性も含めて、もっともっと人気出ていいと思ってるー(泣)一方の宮尾さんは、嗅覚で感じる死かなと思った。優美に漂う死。ただ、2幕からは大貫君一人勝ち状態。

大人チームはまとめるとこんな感じ。

石井さんはキーが合っていないのか歌はさほど良くない。すごい民主主義的な大公で、絶対いい街にしてると思う。岡さんは相変わらず異様な歌のうまさだった。絶対放蕩に明け暮れてないけど。神父がまともになった。普通こうですよね…。サカケンならうっかりがありえるが、岸さんはメールの後すぐ確認の電話入れるし、霊廟には約束の30分前に行く、そういう男。キャピュレット夫人の春野さんがいい殻の破りかたをしていた。久々にくねくねしていて嬉しかった!さすがに業の塊みたいなかなめさんの迫力には負けるけど、(かなめさんなら、ジュリエットにいきなり暴露しても何ら驚かない)もっと生々しい人妻の色気があった。

200回記念のアンコールは、生田さん以外のキャストが全員扮装姿で集結して、ナンバーを歌ってくれるという想像以上の豪華さ。ダブルロミジュリの「エメ」、ロミオ、マーキューシオ、ベンヴォーリオの「本当の俺じゃない」、そして中でも最高だった、ティボルト中心の世界の王!和かなティボルトが二人揃うのがまずもってレア。しかも楽しげに世界の王!大人キャストも存分に弾け、ついには死まで歌い出して、自然と手拍子の起きる最高のイベントだった。