だらだらノマド。

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宝塚月組『ON THE TOWN』@梅田芸術劇場メインホール 感想

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潤色・演出/野口 幸作

 

梅芸夏は2年連続でバーンスタイン作品。『ON THE TOWN』は1944年初演というWSSよりさらに年代物。日本では5年前にジャニーズで初演。宝塚では今年1月に東京で初演した後、今回の梅芸版。東京から、中心となる水兵三人組のうちオジー風間柚乃さん→鳳月杏さんへ変わり、他、娘役の主要キャストが役替わりに。

作品としては古く冗長。せっかく熱してきても盛り上がり切らず不完全燃焼が続く。ジーン・ケリーの『踊る大紐育』はもっと楽しかったような…とかすかな記憶を反芻していたら、舞台版からかなり改変していたよう。
今回は版権上、脚本・ナンバーのカットや変更は難しかったそう。でも、少なくとも装置や演出でブラッシュアップできたのでは。このミュージカルのミソはニューヨークの名所を巡りながらボーイミーツガールが展開するってところなのに、そのお上りさん的なワクワク感が全く伝わってこないのはキツい。(照明も暗く、印象に残らない)ホリゾントを使ったほぼ素舞台のダンスシーンも元々の装置が舞台を飾り切れていないので、ただ安っぽく見えるだけ。今回せっかく客席降りを多用して舞台と客席の距離感を縮めてるのだから、お客さんもゲイビーたちと束の間のニューヨークツアーを楽しめるような仕掛けが欲しかった。

 出演者が役柄によくはまっていたのが救い。ゲイビーの実直さはたまきち(珠城りょう)そのもの。古き良きラブコメに正しくきゅんとさせてくれる、さすが結婚したい男役ナンバー1(ノマド調べ)。ただ、「BADDY」以降、爆発できず燻っているのが悔しい。ぼちぼち「実直で誠実」以外の面が見たいし(演出家の責任でもある)、トップとしてももう一皮、二皮剥けてほしい。そのためにも、ちなつ様の帰還は大きなプラスになると思う。ちなつ様の男役芸を貪欲に盗んでいってほしい。
アダルトな女たらしオジーはちなつ様(鳳月杏さん)。お兄さん的な役回りで、2人との掛け合いも軽妙。衣装は水兵服1着のみという宝塚ならではの華を封じられた状態で、その衣装で一番素敵に見える仕草や動きを隙なく完璧にこなしていて、あぁ…今わたしは宝塚を観ている…としみじみ感動した。今では数少ない「男役」。
甘ったれぼうやのチップに暁千星さん。最高にキュートで、コメディセンスに溌剌としたダンスも光る。今まで見た暁さんの中で一番のハマり役だった。

娘役チームも個性豊か。美園さんはダンスシーンで抜群のスタイルが活きていた。ちょっと今までに観たことのない不思議な個性を持った娘役さんで、いい感じに熟していけば面白い。
ヒルディの白雪さんは迫力のパフォーマンス!宝塚の娘役でこれだけ振り切れる人は貴重。劇団には本当に大事にしてほしい。夢奈さんも楽しそうに伸び伸び。高音がよく出てたのには驚き。海乃さんは超個性的な役柄。フィナーレではしっかり踊っていて、体の調子も良さそうだった。他、嬉しかったのは、結愛かれんさんがダンスシーンで大活躍だったこと。キレキレだった。

フィナーレがたっぷりついていて、最後には客席降りも。隣の人たちがちなつさまー!!と黄色い声援をあげていて、もう少しで乗っかりそうだった、危ない。月組、二手に別れてもスカスカになっていなくて、嬉しい。入らない組とレッテル貼りたがる人もいるけど、実力者揃いで超充実した組だと思うので、踏ん張ってほしい!!